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「神林さんは彼女作ったりしないんスか?」
前髪を掻き上げ店内を見回したところで唐突な質問が飛んでくる。
「いない前提で話すなよ」
「え! まさかいるんですか?」
「いないけどよ」
「なんスか、それ」
翔太は大げさに驚いてから、呆れたように嘆息した。俺はお通しの切りコブに箸を伸ばし反論する。
「そういうお前はどうなんだよ。こんなことしてて良いのか?」
チャラチャラして見えるが、明るくさっぱりとした男だ。女子受けの良いスポーツだって出来るだろうし、それなりにモテてもおかしくない。近所だっていうアパートで女が待ってたりするんじゃないのか。
「俺もいないっスよ。去年の夏、別れたんで」
あっけらかんとした答えに突っ込んでいいものかどうか判断できず「そうか」なんてつまらない返事をしたが、翔太も気にする様子はなく話を続けてきた。
「ダチの紹介で付き合うことになったんスけど、どうにもダメで。向こうは好きだの愛してるだの言ってくれたんですけど、全然気持ちが動かなくって」
翔太は立ち上げた前髪を引っ張るように弄りながら、ニヤと右の口端を持ち上げた。
「追われるのはダメ。自分から追わなきゃなんです」
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