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「モテる男は言うことが違うな。俺も言ってみ……っ!」
突然手首に走った鋭い痛みに言葉を飲み込む。痛みの先に目を向ければ、何故か翔太が俺の左手首を掴んでいた。押しつけられた腕時計のメタルバンドが俺の皮膚を挟む。
「何すんだよ急に」
睨むようにして視線を上げると、同じように眇めた視線が俺の顔を見ていた。ちょうど漬物と芋煮が届いたが、それでも翔太は手を離そうとはしない。
「おい?」
「俺、自分から追っかけたいんっスよ」
ぽつりと落とされた台詞とギラついた視線がどうにも一致しない。
(もう酔った……訳ねぇよな)
サシで呑むのは初めてだが、こいつと呑んだことが無い訳じゃない。どちらかと言えば酒には強かったハズだ。
(よっぽど好きな奴でもいるのか)
青臭い二十代だぜ、なんて思いながら苦笑した。俺だって二十代だ。まあ学生って訳でもねぇんだから、いつもの猪突猛進を発揮すれば良いだけだろう。
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