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翔太は残った指に全てちゅと唇を付けてから、漸く手首を離した。俺は左手を引き戻し、正面の顔をギロリと睨む。
「俺は女じゃねぇ」
翔太はくくと肩を揺らした。
「知ってますよ。そんなこと。女だから好きとか男だから好きとかそういうことじゃ無いんですよ」
「どういう……ことだよ」
何を信じたら良いか分からなくなる。静かにビールの泡が消えていく。
「神林さんだから好きなんです。神林俊之だから好きなんです」
「…………意味解んねぇ」
翔太はにっこりと笑顔になった。俺だから好きだとか、本当に馬鹿じゃねぇの。
「じゃあ、今日のところはここまでにします。食いましょ。あ、丁度唐揚げも来たっぽいですよ」
パチンと両手を叩き、翔太は場の空気を元に戻した。自分で変な雰囲気作っといて、自分だけ先に戻るとか無しだろ。
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