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(ズリィ)
「ほら、今日は神林さんに栄養を取らせる会っスから。ちゃんと食って下さい」
「だから、それ止めろって」
「ちゃんと食べない神林さんが悪いんスよ。自業自得です」
「だから餃子だって主……」
「食じゃないっス。じゃあ明日島田さんに訊いてみて下さい。餃子は主食ですかーって」
届いた唐揚げをテーブルの中央に移しながら、翔太は意地悪く唇を尖らせた。俺はうっかりさっきのキス(?)を思い出してしまい、左手をテーブルの下に隠す。
「やだよ。あんないけ好かねぇ眼鏡」
「ですよねー。アハハ」
翔太は本当に何も無かった顔をして笑う。
(そうだな。俺も、こいつも、酔ってただけだ)
俺は漬物に箸を伸ばそうとしたところで思い直し、唐揚げを一つ取り上げる。
「あ、まだレモン搾ってないですけど良いっスか?」
いらねぇよと返しながら、ふぅふぅと息を吹き掛ける。
「アッハッハ。可愛いなぁ。神林さん猫舌ですもんね」
「うるせえよ! ……熱っ!」
負けず嫌いに唐揚げを囓れば、熱い肉汁に反撃された。恨めしくそれを睨みながら取り皿に置くと、繊維の間からじわりと肉汁が溢れ出す。くそう、熱い。
「アハハ。言わんこっちゃ無い」
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