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余裕をこいた顔で自分も唐揚げを持ち上げた翔太は「でも、そんなとこも好きなんですけどね」ととんでもないことを嘯いた後、熱々のそれにがぶりとかぶり付いた。ほふほふと熱そうにしているが、そのままどんどん咀嚼していく。こいつは面の皮だけじゃなく、口の皮も厚いに違いない。
「……馬鹿じゃねぇの」
「はふ? 何か言いました?」
なんでもねぇよと返し、俺は再び唐揚げに戻る。正面の顔はさっきの言葉通り俺のことが好きだからなのか、ただ単に唐揚げが美味いからなのか分からないが、仕事場では見せない幸せそうな笑顔を振りまいている。
(どっちにしろ……馬鹿だ)
俺は思いっきり唐揚げを口に入れた。二口目のそれは翔太が笑顔になるのも分かる美味さだった。
「美味いでしょ? 俺はもう一個!」
そう言うなり、二個目を口いっぱい頬張る。もぐもぐと動く頬は昼の菓子パンを思い出させた。
(マジでリスだな)
くくくと笑えば、翔太はほっぺたを膨らませたままヘラリと笑う。いや、褒めてねぇからな。
了
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