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「そう言う神林さんこそ足りたんですか?」
「ん?」
「おにぎり二個でしょう?」
外回りの途中で寄ったコンビニの駐車場である。本当はチェーンの牛丼屋に行くつもりだったのだが、間の悪いことに休みだった。なんでも前日に七十代のじいさんの運転する車が盛大に店に突っ込んだらしい。牛丼屋も(勿論俺たちも)大迷惑だ。そんな風に歳は取りたくねぇ。
「夜食うから良いんだよ」
嘯いてもう一口コーヒーを飲む。コンビニのくせにやっぱり熱い。
「嘘ばっかり。絶対酒ばっかり呑んで、碌に食べてないんですよ」
だって、ほら、と横から翔太の手が伸びてきた。
「こんなに薄いんだから。うわ、マジで薄い。ちゃんと食ってます?」
「止めろよ」
ワイシャツの上から無遠慮に俺の腹を触る手を払い除けて、浅黒い顔を睨んだ。大学時代はサーフィンにスノボにと年がら年中スポーツをしていたらしい後輩は、日焼けだけでは無く地黒もあるんだろう、濃い色の肌に金色に近い茶髪をおっ立たせて、どこかチャラチャラとした雰囲気を醸し出していた。けれどスーツの下の胸や腹はパンと張っていて、俺の薄いそれよりも悔しいかな、ずっと逞しい。
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