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「キュウリと餃子! 主食は?」
素っ頓狂な声にもう一度顔を戻せば、声と同じ惚けた顔をしている。
「餃子だろ? 小麦だぜ」
「違いますよ。米とか麺とかそういう奴です」
「それは食ってねぇな」
「だから神林さんは薄いんですよ。ちゃんと食べて下さい」
母親みてぇな事を言いやがる奴だ。俺はふたの上から息を吹きかける。紙コップの中からフゴウと効き目があるのかないのか分からない音がした。
「お前のそれと一緒だよ」
「それ?」
「菓子パン。それだって飯じゃねぇ」
顎をしゃくって食いかけのパンを指す。パンだって同じ小麦だろ? 肉を使ってる分、餃子の方が飯っぽいってもんだぜ。
翔太はその残ったパンを一口に頬張って、ビニール袋をくしゃくしゃと丸めながら言った。
「毎日そうなんですか?」
「そうって、毎日餃子は食わねぇよ」
「違いますよ。夕飯の話です。毎日主食なしのつまみだけなのかってことっス」
こんな時ばかり保温効果を発揮する熱々のコーヒーを啜った後、眉間にシワを寄せたまま隣の顔を睨む。
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