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「まだ食べんのか?」
翔太は齧歯類がそうするみたいに口を絶えずもぐもぐとさせて楕円形をしたパンを食べ続けていた。それはあずきと生クリームが入った奴で、翔太は「生クリームじゃなくてホイップクリームっスよ」と細かいところに拘っていたけれど、どっちにしたって甘いことには違いない代物だった。奴はそれをひたすらに囓っている。さっきまで「あまおうジャムですよ!」とこれまたよく分からない拘りで訂正されたイチゴジャムとカスタードクリームの奴を食べていたっていうのに。
「だって昼飯っスよ。流石に一つじゃ足りないじゃないですか?」
「だから昼飯だろ? そんな甘いのはおやつじゃねぇか」
そもそも菓子パンと言うくらいだ。飯ではない。菓子だ。
翔太はほっぺたを膨らませながら「パンはおやつに入りません」と反論する。女子がやる可愛い奴じゃなくって、リスとかネズミがやるみたいな食い物が詰まったアレ。可愛くねぇ。
「まぁ良いけどよ」
俺はコーヒーの紙コップに恐るおそる口を付ける。ふたがあるのは零れなくて良いが、冷めにくくて困る。俺は猫舌なのだ。
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