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そして響の言葉に悠人はひっかかるものを感じた。彼は「幽霊さん」と呼びかけていた。
「え、これ幽霊なの!?」
幽霊ということは、元々は人間だったはず。
悠人からは灰色のもやもやにしか見えないし、響や千影が言うにはぐちゃぐちゃらしいし、幽霊と言われてもピンとこない。
「幽霊だよ。冴木くん、何だと思ってたの?」
「妖怪とか」
「ひ、ひどい! 女の子に妖怪だなんて! 謝って!」
「え!? ごめん! だって灰色の霧みたいな感じだったし! そういう種族の妖怪なのかと」
女性に対して「妖怪」は暴言だったかもしれない。でも、人の形をしてないものを幽霊だと認識するのはなかなか難しいことだ。
響と千影にはかろうじて人の形に見えているようだが、それも「人に近い形をした妖怪」だからなのだろうと勝手に思っていた。
「ほら、幽霊さん離れないって言ってるよ。冴木くんがひどいこと言うから!」
どうやら悠人は幽霊を怒らせてしまったらしい。響が呆れたような声を出した。
「俺のせいかよ! っていうか、後ろの奴が何言ってるかわかるの!?」
「今聞こえた」
「聞こえたの? 女の子だった?」
「うん、女の子の声だったよ」
やはり女の子なのか。
彼女いない歴イコール年齢の冴木悠人は、女性というものに対して憧れがあった。
姉も妹もいないため、その気持ちは他の男子高校生よりも強いかもしれない。不気味な存在ではあるが、まぁ女の子ならいいか、なんて思ってしまう自分もいた。
だが、ずっと後ろにいられても困る。どうしたものかと響と唸っていると、教室の扉が開く音がした。
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