5 運命の人

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 透は歩きながら優花の涙を思い出して、涙を拭った指を握り込んだ。    出来れば、優花の側にいたい…。  けれど、…それが出来ない…。  やはり、無理なのか…?  ぐっと、歯を食いしばった。その時。  突然、後ろから抱きつかれて、透が振り返ると、そこいたのは、優花だった。  「…ゆう…か?」  「……好き…」  「……え…」  「私は!透のことが好き!」  「………」  透は、一度口を結ぶと、優花の腕を掴んで歩き出だす。    「と、透…?」  「ついて来て」  その後、二人は無言で歩いて、やがて、マンションの一室の前に立つ。  透が部屋の鍵を開けて、扉を開けると、入るよう、優花を促す。  扉がしまる音が、響く。  「本気で、言ってるのか…?」  透の質問に、振り返った優花はゆっくりと頷いた。  「私は、透が好き」    その言葉を聞いた途端、透は優花を引き寄せ、唇を重ねていた。  透の背中が扉に当たる。  軽く音をたて、唇が離れると…お互いの熱い吐息が二人の間を満たす…。  「ねぇ、透…」  「ん…?」  「透は…?」  優花の言葉に、透は微かに笑った。    「俺も、優花が好きだ。ずっと前から。いや、出会った時から、ずっと」  「私も。私も透が好き。出会った頃から、ずっと」  「…優花、知ってたか…?両親の再婚で兄妹になった二人は、血が繋がってなかったら、結婚出来るって事」  透を見上げる優花の瞳の奥に、赤々と燃える炎よりも温度が高く、冴え冴えと青く静かに燃える炎が揺らめく。  きっと、透の瞳にも同じような炎が揺らめいているんだろう。  二人は笑い合って、もう一度くちづけた…。
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