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1 出会い
透が優花に初めて会ったのは、11歳…小学校5年生の時、父の再婚相手…現在の義母、里子の娘だったのだ。
初めて会った時のことは、今でもはっきり覚えている。
四人で食事をしようと、父にホテルのレストランへと連れて行かれた透は、里子の隣に立ち、恥ずかしそうに俯く優花と対面した。
肩まで伸びた柔らかそうな黒髪、うっすらと染まった頬。
ピンク色のワンピースに白いレースのカーディガンを着た華奢な身体。
ワンピースのスカートを、軽く握っている、白く細い指。
まるで、その子の周りだけふわふわとした光が舞っているよう…。
透の目には、同級生のどの女の子よりも可愛く見えた。
お互いの挨拶を終え、席に着くと、食事は和やかに進んでいく。
里子とも、父である正幸とも会話はしていたが、透の意識はずっと優花に向いていた。歳が近い男子である透を意識しているのか、目が直接合わないのが残念…そう思っていた矢先。
デザートで出てきたイチゴを使ったプリンを優花は気に入ったらしく、口に含んだ瞬間、花が綻ぶように笑った。その顔がとても可愛くて、どうしてももう一度見たくて、透は自分のプリンを優花にあげた…その時。
「いいの!ありがとう!」
パッと顔を上げて、満開の笑顔を透に向けたのだ。キラキラと輝く宝石のような瞳と目が合ったその瞬間、透は捕らわれてしまった。
優花という存在に。
日を追うごと、年を追うごとに燃え盛り…やがては抑えきれなくなる程の感情…それに火が付いた瞬間だったのだが、この時まだ小学生だった透にわかるはずもない。
だから、帰り道、父の正幸に、里子さんに透のお母さんになってもらおうと思っているんだけど良いか…?と聞かれた時も、優花と一緒にいられる時間が増えるなら…そう思って「いい」と答えたのだが、そんなことは知らない父は嬉しそうに微笑むと、透の頭を撫でながらこう言った。
「なら、優花ちゃんは透の妹になるな…」
と。
妹?優花が…?
透は、その時本能的に思ったのだ。
違う。「妹」じゃない。
優花は違う…違うけれど、どう違う……?
何が違う……?
ずっと一緒にいて欲しくて、自分だけ見つめて欲しくて…きっと優花のためなら、自分はなんだって出来る…そんな存在。
多分それは「妹」ではないけれど、じゃあ「何か」と聞かれても、上手くは言えない…けれど、この時の透には優花に出会えた事の喜びが何よりも優っていた…。
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