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王子様みたい…。
それが、優花の透を見た時の第一印象だ。
母に連れられて足を踏み入れたホテルのレストラン。その入り口で、まだこちらに気づかず、話をしている父子を見つけた母は、
「あそこにいるのが、正幸さんと息子の透くんよ」
そう優花に紹介した。
透を見た時に思ったのは、この間観に行った映画のお姫様が恋する王子様にそっくり、だった。
紺色のパンツに、白いシャツ。そんなシンプルな服装にも関わらず、いや、シンプルだからこそ、彼本来のすっきりとした清涼感や清潔感が際立つ。
同級生の男子に抱く印象は、下品でガサツ…この時もそういう男子が来ると思っていたから、透から目を離せなくなった。
けれど、近づくほど胸がドキドキして自然と視線は下を向いてしまう。
それから、恥ずかしくて直接見ることは出来なかったものの。優花はずっと透の涼やかな声を意識していた。
けれど、デザートに出てきた、優花が一番好きな、イチゴを使ったプリンを一口食べた瞬間…
美味しい……っ!
恥ずかしさや緊張は何処かへ飛んでいってしまった。
そんな優花に
「プリン、食べる?」
そう言ってくれた透の言葉が嬉しくて、パッと顔を上げた瞬間に目が合った。
その瞬間、優花は思ったのだ。ごく自然に。
この人はずっと私と一緒にいる人だ…。
どうしてそう思ったのか、優花にもわからない。けれどそれは「本能」が告げた言葉だったのかもしれない。
だが、小学校3年生…9歳だった優花は、それがどういうものなのか、まだ気づかない。
だから、
「いいよ。あげる」
プリンと共にもらった、透の蕩けるような笑顔が素直に嬉しくて、ただただ幸せだった。
その日の夜、優花は母に
「透くんがお兄ちゃんになってくれるとしたら、嬉しい?」
そう聞かれて、優花は聞き返した。
「そうしたら、ずっと一緒にいてくれるのかな?」
優花がその時考えていたのは、どうしたら透とずっと一緒にいられるのだろうということだった。
そんな娘の質問に母は笑顔で
「そうね。きっと優花のことをずっと守ってくれるわ」
そう答えた。だから優花は「お兄ちゃん」になってもらえばいい、そう思った…。
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