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遭難三日目。
通信機を解体し、破損部分の修理をしていると、甲高い鳴き声が聞こえてきた。
「ナージ!」
俺はため息をついて振り返った。
背後には例のサザ星人が立っている。
俺は顔をしかめて、しっしと手を振った。
「うるさい、あっち行け。焼いて食うぞ」
「やっちぇみろ! チュリリリリ~!」
嫌がらせのつもりなのか、サザ星人は甲高く鳴いた。
赤ちゃんみたいに舌足らずだが、会話が通じるようになってきた。驚異的なスピードで俺の使用する言語を学習しているようだ。
サザ星人は卵の状態でも学習ができるようで、生まれてすぐ会話ができる個体がほとんどだと、サザ星人本人が説明してくれた。
「わーい!」
「あ、こらっ」
サザ星人が俺の周囲を走り回り、その羽が修理中の通信機に触れそうになった。
「触るな!」
「わっ」
頭がカッと熱くなり、俺はサザ星人を突き飛ばしていた。
地面に転がるサザ星人の姿を見て、俺の胸に罪悪感が生まれる。
サザ星人は起き上がって俺を見上げると、その目に涙を浮かべた。
「怒っちゃ」
「悪かった、俺が悪かったから、泣くなって!」
「うぅ」
サザ星人は目元をこすりながら、地面に散らばった植物を木の器に入れ始めた。
転がった時に中身を倒してしまったらしい。
「それは?」
「ゴハン。うりゃやましい?」
先ほどの仕返しなのか、サザ星人はちょっと意地悪な言い方をした。
器の中を覗くと、大量に目玉がついた植物と目が合って、ぞわっと鳥肌が立った。
「いや、べつに。食べられないし」
「え!」
サザ星人は目を丸くして、それから心配そうな顔をした。
「本当に食べりゃりぇないの?」
「多分、俺には有害だな」
「でも! ナージ、何も食べちぇないよ?」
「俺のことはいいから自分の心配をしとけ」
サザ星人は頬を膨らませて、ぷいっと顔をそらした。
「ナージが食べないなりゃ食べない!」
「何でだよ。食べればいいだろ」
再び目をうるませるサザ星人に、俺は深いため息をついた。
「わかった、食べられるかどうか調べてみるから」
「ほんと? 仕方ないな! 調べさせちぇあげる~!」
サザ星人は嬉しそうに甲高く鳴いた。
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