4人が本棚に入れています
本棚に追加
「猪口さんが体調悪いってこと、周囲には絶対に言わないから」
安心、してもいいのかもしれない。
不安に駆られる日々から、抜け出すことができるのかもしれない。
そんな希望を、染井くんがたくさん与えてくれる。
「猪口さんとの約束、ちゃんと守るから」
「さっきの……」
「あ、初めて笑ってくれた」
「すみません、あの……えっと……」
だけど、今は嬉しすぎて涙が止まらなくなりそうだった。
言葉の紡ぎ方が分からない。
どういう言葉を返せば、染井くんが喜んでくれるんだろうとか考えてみるけど、頭は回ってくれない。
「秘密から始まる関係って、なんかいいね」
「え、あ、その……さっきの口止めは、家に連れ帰されると思ってしまったからで……」
上手く笑えているのかどうかが分からない。
自分で自分の表情を確認できないって、こういうとき不便だなって思う。
笑顔の作り方すら忘れかけていたから、笑顔が強張っていないか不安になる。
「猪口さんが秘密を手渡してくれたから、俺は強制的に猪口さんを保健室に連れていこうと思ったんだよ」
でも、今は染井くんの言葉を、染井くんが見せてくれる笑顔を信じたい。
新しいクラスに馴染むことへ不安を感じていた自分が、綺麗な笑みを浮かべられているって信じたい。
最初のコメントを投稿しよう!