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「染井くんの手、掴んでもいいですか」
「どうぞ」
目の前に用意された新しい居場所に、足を踏み入れてもいいですか?
そんなことを神様に問いかけたいけれど、その問いへの答えは返ってこない。
神様が人に直接答えを教えてくれないと知っているからこそ、私は自分で自分の行く先を選ばなければいけない。
「染井くんに相応しい友達になれるように、誠心誠意努力……」
「猪口さん、猪口さん、堅い! 堅いからっ」
「だって、友達の作り方が分からなくて……」
「ははっ、猪口さんと一緒なら、これからの高校生活楽しくなりそう」
笑ってくれる。
笑っていてくれる。
穏やかで温かい笑顔を、僕に対して向けてくれる。
そんな人が、ただただ目の前にいてくれることを幸福に思う。
「ねえ、猪口さん、約束」
どうして染井くんは、私に対してこんなにも優しい眼差しを向けてくれるのか。
どうして、こんなにも優しい言葉を差し伸べてくれるのか。
次から次へと溢れ出す疑問があるけれど、その疑問1つ1つに答えを出す必要はないのかもしれない。
「無理をしてもいいけど、俺には声かけて」
悔しくて泣いた日があった。
悲しくて泣いた日があった。
毎日が嫌すぎて泣いた日があった。
「体調が悪いですって」
なんで私ばっかりが、って泣いた日があった。
自分の弱さに泣いた日があった。
「周囲に心配かけないように、猪口さんを助けにいくから」
自分に強さがあれば、ときどき現れる弱い自分耐えることができたかもしれない。打ち勝つことができたかもしれない。
でも、私は弱いままだったから、いっぱい泣いた。
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