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何が起きているのか理解できなかった。夢ならば、早く目覚めてほしかった。
俺とミホは、リビングのソファーに座って、しばらくボーっとしていたが、やがてミホが口を開いた。
「これ、食べてみない?」
コンビニの袋を開けて、中の商品を取り出すミホ。
「半分ずつ食べる?」と、俺。
「うん。いっしょに味見しよ。まずケーキから」
俺とミホは、フォークで〈ユδっЮク・ケーキ〉をひと口ずつ取り、顔を見合わせた。ミホは、少しうれしそうだった。
「いただきまーす」
二人同時に口に入れた。
……二人とも、何も言えなかった。それは未知の味だったのだ。今まで食べたどんなものとも違う味。〈甘い〉に近いが、〈甘い〉とは違う、新しい概念とも言える味だった。
「おいしい~~~~!!」
ミホは歓喜につつまれ、涙を流していた。たしかにこれは、感動のおいしさだった。
しかし、いくらミホがデザート好きとはいえ、泣くほどのことか? そうミホに言おうとしたがやめた。俺の目からも、涙が流れていたのだ。もう一つ買った〈ユδっЮク・プリン〉も、感動のおいしさだった。
〈ユδっЮク〉デザートを食べ終わると、俺とミホは両手を握り合っていた。
ここがどこだってかまわない。何が起きていようが知ったこっちゃない。〈ユδっЮク〉サイコー。〈ユδっЮク〉のある世界バンザイだ!
夢なら目覚めてほしいと思っていたが、訂正する。目覚めるな。夢でなく、現実であってくれ!
〈ユδっЮク〉があって、ミホがいれば、あとはどうだって構わない。俺がミホの両手を強く握りしめると、ミホも強く握り返した。二人はただ見つめ合い、頷き合った。お互いが、たしかにここに存在すると、確かめ合うように……。
〈了〉
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