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「そうだ。チョコでも食べようか。チョコも好きだろ。俺がチョコ好きだから、いつも買ってあるだろ」
「ん? ちょ……こ?」
ミホのその反応に、チョコレートを取りに行こうとしていた俺は、ミホの顔を見返した。
「ちょ……ちょこ……って? 何?」
ミホ! チョコも忘れてしまったのか? やはりミホは何かおかしい。
俺は気を静めながら、努めて優しくミホに言った。
「チョコレートだよ。いつも戸棚に入れてるだろ。俺、ほとんどチョコ中毒だからさ」
ミホに早くチョコを見せてあげようと、俺はリビングの戸棚の扉を開けた。
しかし……、そこには何も入っていなかった。
板チョコや、袋に入ったチョコなどを常備していたはずの棚に、何も入っていないのだ。戸棚のほかの場所もよく探し、キッチンもリビングも探すが、どこにもなかった。
チョコが見当たらないくらいで焦るな。よく思い出せ。どこかにあるはずだ。チョコが大好きな俺は、今まで家にチョコを切らしたことなどないはず。早くミホにチョコレートを見せて、これがチョコだろと、安心させてあげたいという焦り。その焦りは、何かがおかしいぞという焦りに変わりつつあった。
いつの間にか、ミホが後ろに立っていて、黙ってスマホの画面を見せてきた。
俺は愕然とした。
「チョコレート」の検索結果。……無し。何も引っかかっていなかった。
俺は自分のスマホで、必死になって検索したが、まるでこの世にチョコレートが存在しなくなってしまったかのように、何も検索結果に出てこない。「チョコ」という言葉の検索には、盃である「おちょこ」しか表示されない。
そんな馬鹿な!
ミホが不安そうな顔で俺を見ている。ミホの「ヌネガン」と同じことが、俺には「チョコ」で起きているのか?
「コ……コンビニに行ってみよう」
「うん」
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