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〈ユδっЮク〉が何なのか、想像も推測もできなかった。なぜならその〈ユδっЮク〉ってやつは、パッケージの写真や、デザートの透明容器から見える中身が、今まで見たことのない色をしていたからだ。赤とか青とか茶色とか、ほかのどの色とも違う色であり、今までの人生において、まったく見たことがない色をしていたのだ。
理解を超えたこの状況に、俺はただ立ち尽くしていた。
「大丈夫ですか?」という声に、ふと我に返った。
学生アルバイトっぽいコンビニ店員の男が、俺の隣にしゃがみ込むミホに声をかけていた。
俺は、ミホがしゃがみこんで、うなだれていることに気が付かなかった。慌てて「大丈夫か」と、ミホの両肩を支えた。
ミホはこくりと頷き、ゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫……」
ミホが弱々しい笑顔を、俺と店員に向けた。
チョコがないことと、〈ユδっЮク〉があること以外、そのコンビニにおかしなところは見当たらなかった。何も買わずに出るのも気が引けたし、〈ユδっЮク〉ってやつも気になったので、〈ユδっЮク・ケーキ〉と〈ユδっЮク・プリン〉を一個ずつ買った。いつもの電子マネーも普通に使えた。
普段は五分の帰り道を、十分かかって家まで帰った。
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