第1章

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「そんなんじゃないよ」 「へー。その割にはさっきからずっと目擦ってんじゃん」  さっきから擦ってはいたがどうして見破られるのだろう。  そう思いながらも涙を止めることを考えた。 「また目痛くなるよ?」  そう言って腕を掴まれた。  痛くなるほど擦っていた訳では無いのだが。 「ほーら……また目赤くなってるよ?痛くない?」  声にすると涙声だと分かってしまうからあえて頷くだけにした。 「痛くないならいいんだけど……強く擦ったらダメじゃん」  心配されていることも優しさを与えてくれていることも伝わってきた。  けれど、私はこの優しさを親以外から受けるのは初めてだった。  自分では涙の勢いが増した気がした。 「まって、俺なんか言った……?」 「そんな……優しくされるようなこと……私何もしてない……」 「俺そんな優しく無いでしょ……」
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