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「けっこういいお金にはなったみたい。他の家の子も斡旋してたんじゃないかな。父親はカメラマンって言ってたし、だから他所から見れば普通に暮らしてるようだったんじゃない? 母親も外面が良かったし。あたし、学校に行ったことないの。親が家から出さなかった。学校には身体が弱いから行けないって診断書を出したの。そしたら家で勉強すればいいって。だからたまにパソコンの授業とか受けてたよ。ああ、嘘の診断書を書いた医者は撮影会によく来てた人で初めてのヤッた人。JSの処女は高値で売れるって親は喜んでた」  吐き気がした。そんなことやらせる親なんて本当にいるんだって。信じられなかった。 「学校に行きたかったけど。誰かに話されたらヤバいだろうし、それに好きな人とかできたら困るじゃん? だからずーっと家から出られなかった。知らない男が来てヤルだけ。けどだんだん成長して価値がなくなってきたんだろうね。ただヤルだけじゃなくて、だんだん過激なことをやらされるようになった。何人かと同時にとか過激なプレイとか」  美桜は言葉を切った。私達は何を聞いてるのだろう。だけど言葉が出てこなかった。 「酷い言葉も言われたし、痛いことも嫌なこともいっぱいされた。泣いて嫌だって言ってるのに、それが興奮するんだろって。『お前は価値がない』『ただの処理道具だ』って、言われ、て、なんで、生きてるんだ、ろう」  美桜が胸を押さえて倒れ込んだ。苦しそうな呼吸だった。 「美桜!」私達は弾かれたように立ち上がり駆け寄った。痙攣が始まっていた。 「美桜ッ!」私は肩を掴んだ。呼吸ができないのだろうか。背中をさする。心春は救急車を呼ぼうとスマホを出した。 「──どけ。なんか袋はあるか?」私は肩を押されて退かされた。  そういえば、と私はポケットを探る。コンビニに行く時のために袋を入れてたはずだった。それを慌てて渡す。若槻はそれを広げて美桜の口元に当てた。 「ゆっくり呼吸しろ。ゆっくりだぞ。急いで吸うな。吐ききれ」そう言って美桜の背中に手をあてて抱えた。しばらくすると美桜の痙攣もおさまった。 「もう大丈夫だ。ゆっくり呼吸するのはやめるなよ。もう少し頑張れ」  私も心春もホッとして長いため息を吐いた。 「辛いことは話さなくていい。そんなところから鮫島の兄貴がおまえを助けてくれたんだな?」  美桜は頷いた。 「そうか」若槻はそう言って優しく美桜の背中を何度もさすった。  美桜のリスカの痕の理由が分かった。それに美桜が他の人とうまく話せない理由も。
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