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 またスマホが震えた。心春はすぐにタップしてスピーカーに切り替えた。 『いま、大丈夫っすか?』 「ああ」また勝手に操作したせいか若槻は不機嫌に答えた。 『その動画は過激な団体がアップしたもののようです。名前は変えてますが』 「ああ、どっかの過激なフェミのババアだろ?」  若槻がそう答えると電話の向こうは押し黙った。 『はい、その通りです。ただその団体と殺しは関係なさそうですね。いくら過激だといっても直接手を出したことはありませんから。それからねずみとタバコですが──そちらは少し気になるものを見つけました』  私達は思わずスマホに寄った。 『コメント欄に気になる書き込みを見つけました。ひとりで過敏に反応してる野郎がいまして。そいつのSNSを特定して調べたらって出てきたので』 「どのアカウントだ?」  するとスマホが光った。私達はまた慌ててリンク先を押す。そこには煙草の吸い殻の写真と〈かわいいネズミをプレゼント〉と書いてあった。さすがに鼠の写真はあがってなかった。 『どうします? センセイに頼んで適当な理由で開示請求しますか?』 「いや……」若槻は歯切れ悪くそう答えた。  心春はすぐにそのアカウントを自分のスマホで探し出した。そしてそのアカウントの投稿を追い始めた。  何かわかったら連絡します。そう言って電話は切れた。私は若槻のスマホの動画を何度も見直した。この動画は神奈川であることもましてや鶴見であることも一切書いてないし言っていない。場所も特定できないようにしっかり処理してある。鮫島さんの後ろ姿ですらモザイクがかかっていたし、キッズ達は顔だけでなく上半身全部にモザイクがかけられている。看板にも車のナンバープレートにも。どこをどう見ても知らない人が見たら分からないようになっているのだ。ただひとつ自分が映り込んだ場面を除いては。もしかしたらあえて処理しなかったのではないか。わざと残した。そう考えるのが自然だった。強烈な自己顕示欲だった。 「この場所を知ってる人」私は自然と口からこぼれていた。「この近くに住んでる人じゃないかな」 「そう、だと思う。この踏切の写真、鶴見市場駅って書いてある」心春はそう言ってスマホを掲げてみせた。そして拡大するとその文字がはっきりと確認できた。
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