ステージの下から、あなたと

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 春休みということで色々と調べると、一般の人に聴いてもらう動画投稿サイトの他に、セミプロ向けの楽曲投稿サイトというものがあるらしかった。  あまり有名でないVチューバーやアイドルに楽曲を提供するらしい。提供するこちら側も有名な作曲家やボカロPなわけではないので、お互いにウィンウィンの関係なのだろう。  私は、他人に提供する曲ということで、今までの曲とは違い、自分なりに曲のコンセプトやテーマを決めて曲を作った。  男性アイドルよりも女性アイドルの方が好きだったので女性アイドル向けの曲。自分と同い年くらいの、これからアイドルとしての階段を駆け上がっていく子達をイメージして、『今はまだ何者でもない私だけど、これから輝いていく』っていう、ありきたりかもしれないけど、自分が一番気持ちを込めて詞を書けるテーマで。  これまでの曲もこれだけ気持ちを込めればもっと伸びたんじゃ。そんなことを考えながらも、その気持ちも曲に込める。 『今までの努力 後悔があっても これからの自分 輝かせられるから』  サビの前、自分でも気に入っている歌詞だ。  作曲は、メロディを考える、伴奏を考える、詞を考える、ソフトに歌わせる、などいくつも工程があるけど、最後のミックスとかマスタリングとか呼ばれる作業が個人的に一番難しいと思っている。  テレビやネットで流れるプロの音楽と自分のようなアマチュアの音楽とだと、聴こえる音の厚みというか本物の楽器っぽさが全然違う。感覚でなんとなくやっていた今までと違い、ネットで色々調べながらやってみたが、ここはどうしても素人っぽい音になってしまう。  ミックス作業で何日も、PCの画面に映るそれぞれの楽器の波形、音を形で表示したものと私は格闘していた。  こだわればどこまでもこだわれるけど、始めたばかりの今の自分には曲を完成させる方が大事だとネットの作曲講座ページにも書いてあったのでこれで完成させる。 ***  曲のタイトルは、『ステージの上から、キミを』。  自分の曲が使ってもらえるなら無料でも全然構わない気持ちだったけど、他にアップされている曲は全部金額が提示されていたので、私は、その平均の十分の一くらいの金額をとりあえず書いておく。  後は、使いたいという依頼のメールを待つだけ。  私は、曲作りに夢中で高校入学の準備をまったくしていないことに気付き、そちらへかかりきりになったので、その後数日間メールの存在は半分忘れていた。 ***
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