ステージの下から、あなたと

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 今日は始業式翌日ということでさすがに音楽室に先客はいなかった。  私は入口入って左のグランドピアノの蓋を開け、椅子に腰掛ける。  弾くのは、自分で書いた曲、そしてこれからはアイドルグループ「アイドルミナス」の曲となる『ステージの上から、キミを』。  弾くといっても左手は和音を鳴らすだけ、右手もメロディをただなぞるだけしか自分では弾けない。本当の初心者弾きだ。 「♪今まーでのー努力― 後悔があっーてもー」  始業式翌日で人が来ないだろうという油断と、あらためて自分の曲がアイドルの曲に採用されたという嬉しさから、私は右手のメロディに合わせて自分で歌ってしまっていた。  周囲の確認も忘れるほどに浮かれて。 「「♪これかーらーの~自分ー 輝かせられるーからー」」  私の上手くない歌声に、伸びやかな高音がユニゾンする。  聞き覚えがあるその歌声に、私は思わずピアノを弾く手を止める。 ***
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