再び渡良瀬 秋の記憶

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 この日、どうやって帰宅したのかは覚えていない。 気付いたら家でご飯を食べていた。 悲しくてもご飯を食べられるって事は、まだまだ俺は大丈夫なんだと思う。  翌日、夏生さんの家に行こうとしたら、何故か夏生さんの家が見つからない。 見つからないというより、存在しないと言った方が正解かもしれない。 あんなに「近付いちゃいけない」と言っていた両親はもちろん、村の人誰一人として庭に大きな桜の木がある平屋を知らないのだ。 俺はこの日から、毎日神社に1日100円のお小遣いを賽銭箱に投げ入れて 『夏生さんが人間に生まれ変われますように』 『再び夏生さんと出会って、今度はお互いに死ぬまで一緒に居られますように』 と祈り続けた。 夏が来て秋が過ぎ、冬になって春が来る。 桜の木の下に、儚く微笑む夏生さんを想って胸が痛かった。 夏生さんの居ないの世界は色褪せて、俺は生きてるけど死んでいるみたいだった。 「夏生さん……」 ポツリと名前を呼ぶ度、涙が止めども無く流れた。 そんな日々を3年過ごした夏。 俺、渡良瀬 秋は、いつも通りに神社にお参りに行った帰り道、観光客の大学生が運転する車に轢かれて生涯の幕を下ろした。 夏生さん。 生まれ変わったら、必ず見つけ出すからね。 だから、それまで待っててね。
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