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◇
「少し一人にして欲しい」
今宵ようやく再会が叶った白夜の伴侶は、そう言って一人、部屋に閉じこもってしまった。部屋といえど、寝殿造り風に建てたこの屋敷には間仕切りの部屋など台所や風呂、厠くらいのものだ。東矢とは末永く仲睦まじく暮らしていくつもりであるから、別室を作るなど思いつきもしなかったのだ。どこにいても愛しい伴侶の姿が見られるようにと、壁の少ない伝統的な屋敷にした。山の住人が昔から狭い場所を嫌うからという理由ももちろんある。人の真似ごとをして家などこさえているが、本来ならば雨露さえ凌げればこのような箱なんぞ必要ないのだ。
――ちり……ん
境界線のように垂らされた御簾の前で、白夜は耳をぺしゃりとさせてしょげていた。東矢に見せていた揺るぎない堂々とした雰囲気など微塵もない。
(――東矢は嬉しくないのか?)
ようやっと会えたのだ。それも正式に伴侶契約を結べる状態でだ。幼き日の約束を果たすために、白夜はどんな努力だって惜しまなかった。東矢を抱きしめるために、当時まだまだ甘えたかった母――狼神に向かっていっては容赦なく投げ飛ばされて体だって鍛えた。東矢に頼り甲斐がある亭主だと思ってもらえるように、大人たちの口調を真似しては何度も舌を噛み腫らした。今宵だって、ボロが出ないように一言一言しっかりと気をつけながら言葉を発した。かっこいいと思ってもらえるように、苦手だった遠吠えも幾度となく練習して腹に響く声を出せるようになった。東矢に再会して吃驚させてやろうと、惚れ直させてやろうと、全身を掻きむしりたくなるようなそんなむずむずした気持ちを持て余していたのは己だけだったのか。
(――なぜ笑わない……)
御簾の向こうからいつ東矢が出てきても良いようにと、鷹揚に構えて耳だけをピクピクと動かし中の様子を窺っていた白夜だったが、白夜の伴侶は余程考え込んでいるのか一向に動く気配がない。
――ちり……ん
「白夜様、どこかお出かけで?」
傍に控えていた侍女が、すかさず白夜の肩に羽織を掛ける。徐に立ち上がった白夜は一度だけ御簾を振り返ると、「少し出てくる」と言って渡り殿に下りて行った。
何よりも雄弁にその落ち込みを語る尾を見送って、目尻に黒い墨を入れた女は御簾の向こうへと声をかけた。
「もし、伴侶殿」
完全に立ち上がることはせず、膝立ちで滑るように御簾へと近づいていく。
「もし、聞こえておりますか? 腹は空きませぬか? 人は一日三度飯を食うと言います。握り飯をこさえましたよ。食べなさいまし」
言って、丸い耳に手を添えて耳を澄ます。
「食べませんのか。では私が食べましょう。なんたって里の祭ですからね。そんな日に次代様が伴侶を娶られた。なんてめでたいことでしょう」
――ゴトリ
奥からの音を正確に拾って、女は構わずにふたつめの握り飯に手をつけた。
「次代様、――白夜坊ちゃんはあたいがご奉公に上がってすぐに生まれた子でしてね。そりゃあもう、『あねちゃん、あねちゃん』と可愛かったものですよ。伴侶殿と約束を交わした日のことも、よく覚えていますとも。あの日は祭の準備に皆忙しくてね。守り人様の館の者たちは皆、人の里に出払っていましたの。そうしたら坊ちゃんが行方不明。慌てて探していたら、突如人の国で言霊が結ばれましてね。ふふ。守り人様があんなに慌てふためいていたのを、あたいは後にも先にもあの時初めて見ましたね。中途半端とはいえ、伴侶契約は重い。下手に解除しようとすれば、契約主に負担がかかる。どうしたもんかとみんな頭を抱えたんです。子どもの遊びと違いますからね。気を揉む大人たちをよそに、あの日を境にして坊ちゃんはほんに逞しくなりましたえ。嫌いだった勉学も、お手伝いも頑張りましてね。――急に『俺』なんて言い出した時にはびっくりし過ぎて笑ったもんです。とうとうこんな立派な屋敷をこさえなした。あたいどもの社会では、住処は結納の品。これは坊ちゃんの気持ちどすえ。こんな大層なお屋敷、朝も昼も夜も坊ちゃんはちっちゃい頃からよう働きましたのよ。――あら。あたいったら全部食べてしまいましたね。さて、伴侶殿の飯さ、もういっぺん握ってきますからね」
衣ずれの音が遠ざかっていく。それが完全に聞こえなくなってから、東矢は抱えていた膝から面を上げた。
「俺、何やってるんだろう……」
白夜の気持ちなんて、夕刻出会った時に知ったはずではないか。幼い頃、白夜の耳を撫でた(求婚した)東矢を迎えに来たのだと、そう言っていたではないか。いっぺんに非現実なものを見せられて混乱していたが、全てはそこに起因するのだ。
「迎えに来たってことは、俺はこれから先ここにいるのか……?」
東矢は膝を抱えたまま室内をぐるりと見回した。後方に御簾が垂らされているが、それを上げてしまえば元々ここは十五畳程の一部屋だ。先に屋敷を案内された折、白夜に東の対だと教えられた。五級(ごしな)(五段のこと)の階があった寝殿と短い渡り廊下で結ばれた東の棟だ。寝殿と違い、こちらは完全な居住空間だと言う。その割に、白木の板の間の上には物が何もない。い草で編まれた敷物と、香炉の置かれた低い棚。
――ここで白夜と暮らす。それも伴侶として。
東矢はぼんやりした青年だ。それはもう、幼い時から集落の年寄りたちに影が薄いと言われるくらい、大人しくて八の字に下がった眉がトレードマークの心優しい素朴な青年だ。村を出てからも都会に染まることなどとんとなかった。だからといって、何でもかんでも流されるがままに受け入れることなどできやしない。大人しそうでいて、芯のある青年だった。
東矢はやおら立ち上がると、数歩先にある丸い柱に手を添えた。しっかりとやすりがかけられて艶々とした大木がこの家を支えている。壁の少ない屋敷で、規則的に何本も並ぶ丸柱の存在感は大きい。
「俺のために建ててくれたんだよなぁ……」
東矢にとってはただ動物を可愛がっただけのその行動が、白夜の人生を変えてしまった。乱暴に扱えば簡単に折れてしまいそうだったあの猫が、今日の日を夢見て必死に準備を重ねてくれていたのだ。
縁側で歓喜に震えていた白夜の腕を思い出す。それなのに自分は、白夜とろくに言葉を交わすことすらしていないのだ。
「誠実に生きろって。いっつもじいちゃん、言ってるもんな」
飾り房の付いた紐を引っ張り、御簾を上げた先には、目の下に真っ黒な墨を入れた――いかにも『狸です』と言わんばかりの女が、にんまりと握り飯を掲げて廊(ろう)(廊下のこと)の端に座っていた。
◇
膨れ上がった気持ちを静めるために獣姿で山を五つほど駆けまわって新居に戻ると、御簾が上がっていた。庭からそれを認めた白夜が緊張して辺りを見渡せば、幼き日より世話になっている侍女が廊のすみで力強く頷いた。
「――東矢っ!」
下駄を脱ぎ捨てて東の対に飛び込む。正座をしてこちらを見つめる東矢と目が合うと、白夜は取り乱した自分を恥じるように、羽織の裾を大袈裟に払って東矢の正面に胡坐をかいて座った。近づいても逃げられなかったことに内心で安堵し、労わるような色で東矢に声をかける。
「飯は食べたのか?」
「うん。おにぎりを貰ったよ」
「そうか」
「白夜。正直俺は今も混乱しているんだ。昔お前に会ったことだって夢だと思っていたし、それが突然こんな所に来てしまって、お前と似たような人たちと会ったり、話すはずないと思っていた動物たちと会話したり。そして何よりも、俺がお前の伴侶だってことが、信じられない」
東矢が一息で話すのを、白夜は目を逸らすことなく聞いていた。嘘偽りは赦さないというような澄んだ瞳で、己の伴侶を見つめる。
「……お前は俺に求婚したではないか」
――ちりん……
黙りこんだ東矢が作った間に、白夜の静かな声が波紋のように落とされる。
「うん。それね。言いにくいんだけど……、――そしてお前を傷つけてしまうかも知れないんだけど、ごめん。覚えてないんだ。俺、昔から動物好きだったから、撫でたって言うのならきっと撫でたんだと思う。だけど、求婚とかそんな意思はなかったんだ。可愛いから撫でるっていうのは、俺たち人間にとって愛情表現でしかないんだ。――だからね、俺はお前とは生きられないんだよ」
――ちり……ん
何度か聞いた鈴の音が空気に溶けていく。人の世とは気候が異なるのか、もうじき真昼になろうかというのにちっとも汗をかかない。太陽は余所者である東矢をも、ただ優しく照らしていた。
余韻を残した鈴の音が、白夜の傷ついた心を示しているようで、東矢は再び目線を下げた。膝の上で握った拳が震える。これが『弄んだ』ということだろうか。
「――俺は東矢が伴侶だと、ずっと思っていた」
「……うん」
「お前は違ったと、そう言うのか……」
「……ごめん」
絞り出された悲痛な震えが東矢の良心を責めたてる。ざわざわと遠くの木々が葉を重ねて揺らす。その乾いた音も、一匹の純情な里の子を傷つけた東矢を責めているかのように、風の力を借りてどんどん大きくなった。一際ざわめきが大きくなった時、強い衝撃とともに東矢の視界がぶれた。
「……ならぬ」
「――っ」
俊敏な動作で、まさに獲物を狩る獣のように前触れなく前方に飛びかかった白夜は、東矢を床へと押し倒した。正座から後ろに倒れることになったために東矢の膝が中途半端に曲がるも、両の腕と胴から下を縫いとめられれば、身動きが取れない。何よりも、白夜の強すぎる眼光がそれを許さなかった。
「ならぬ、ならぬ、ならぬ!! お前は俺の伴侶だ! 誰がどう言おうと、お前は俺の伴侶だ! ずっと一緒に生きていくのだ! 言の葉は守り神に届けられた。婚約は成立している。違えることは許されないっ!」
肩を滑った白夜の髪が垂直に垂れることによって、東矢の視界はいよいよ狭く暗くなる。白夜の剥きだした歯茎と大きな牙を見て初めて、東矢は白夜が獰猛な獣であることを感じた。東矢の腕をギリギリと絞めている手の先には、鋭い爪も覗いているに違いない。
「……女の人に聞いたよ。約束を反故したら、契約者にもそれなりの負担がかかるって……。俺、そんなに大変なことだったなんて知らずに……。謝って済むことじゃないけど、本当にごめん」
白夜が獰猛な獣であれば、己はこのまま喉笛を掻っ切られるのであろうか。東矢は縦長の瞳孔から目を逸らす代わりに、瞬きに合わせてゆっくりと瞼を閉じた。
顔に直接かかる獣の息遣いと、遮るものなど何もない家屋を通り抜ける風の音。新築の木の匂いと山の土、葉の匂い。
どれくらいの時が経っただろうか。あるいはほんの数秒だったのかもしれない。ミシミシと骨が鳴りそうなほどに東矢の腕を締め付けていた握力が不意に弱められ、痺れた両手に血が巡りだした。腹の上にあった重みも無くなった。
「――俺は、お前を愛している。あの日、出逢ってからずっと、ずっと……。反故による反動を畏れているのではない。ただ、ただお前と共に生きたいのだ」
――ちりん……
声の最後は涙に濡れているかに聞こえた。あまりの切なさに、東矢が肘の力を使い半身を起こした時にはもう、牙を剥き出した獰猛な獣も、月の使いのように美しい獣の姿も消えていた。東矢に飛びついた弾みに剥がれてしまった美しい羽織だけが、板の間に敷かれていた。
◇
白夜はまだ戻ってきていない。
東矢は寝殿の階に腰かけて、庭を眺めていた。風が葉を揺らす。
――愛している。
白夜はそう言った。生まれて初めて愛していると言われた。
日が暮れるまで、東矢はそうしてただぼうっとして過ごした。日が沈んでしまえばあたりは真っ暗だ。月がなければ向いの山さえ見えない。
狸らしき侍女が、握り飯と茶を盆に乗せて置いていった。「湯を使いますか」と訊いて来たので、首を振って断った。
せっかくのお握りは固くなってしまった。茶も冷えて、東矢の喉はカラカラに渇いていた。
「俺さ、高校の時も結局彼女できなくって、で、今もいないんだけど、恋愛対象は女の子なんだ。お前に出逢った時に好きだったのも、同じ塾の女の子だったんだよ」
――ちり、ん……
「じいちゃんに、子どもん頃から『人を傷つけることだけはしなさんな』って言われてて、俺、それ守れてるつもりだったけど、守れてなかったんだな」
――ちり……ん
「好きな子いたくせに、お前にプロポーズしてたなんて。最低の男じゃないか」
――ちりん……
ふんわりと、背中にぬくもりが落ちて来た。ぬくもりは東矢の胸の前にそっと腕をまわし、音もたてずに階に膝を付くと、最後に風に煽られていた銀の髪を背中に落ち着かせた。護るようにそっとまわされた腕に手を添えて、東矢は正面を向いたまま一筋だけ涙を流した。
「東矢、あの頃は俺もお前も子どもだったのだ。俺も考えた。過去のことは良い。今、俺を愛せ」
後ろから、ざらりとした舌に頬を舐められる。涙を追うように、顎の下まで舐められた。
「大切にすると誓う」
「愛せって言われて、はいって愛せるほど、人の気持ちは便利にできていないんだよ」
泣き笑いのようになった東矢の体を抱く腕の力を、白夜はゆっくりと強めた。そして、東矢が気に入っているらしいふさふさの尾でふくらはぎを撫でてやると、東矢の緊張が弛んだ。肌寒かった腕も白夜の体温に触れてほんわりと温まっていく。
「あの日、東矢を舐めて、なんとすがすがしい気の持ち主だろうと思ったのだ。大らかで優しい気と、人間らしい邪な気と」
「……普通、神様は清浄な気を好むんじゃないの?」
「俺たちは神ではない。まっさら過ぎるものには怯えを抱く。多少穢れているくらいがちょうど良い」
「……褒められている気がしないね」
「東矢はそのつり合いが素晴らしいのだ。とても大きな気を持っている。――俺は、山に帰ってからも時折家の者たちの目を盗んでは、お前の様子を見に行っていた。次に会うのは迎えの時だと決めていたから、遠くからこっそりと。どれだけ離れていても、お前の持つ気と匂いは俺を和ませた。そうしているうちに、愛しくて愛しくて仕方なくなっていったのに、ある頃からお前は里から姿を消した」
「……」
「人は脆い。儚くなったのかと思って、目の前が真っ暗になった。しかし、守り人に訊いてもそんなはずはないと言う。俺はそれを信じて、来る日も来る日もお前の気配を探っては、俺たちの家を建てるために必死に働いた。あれから五年だ。東矢、これから五年、俺のことを思い続けろ。そうすれば、きっと俺を愛するようになる」
涙などとっくに残っていない頬を最後に一舐めして、白夜は締め括った。弛まぬ抱擁に、東矢も添えた手を離さない。手を添えたまま後ろを振り返ると、至近距離で茶色い瞳とかち合った。濁ることなどない、真っ直ぐな瞳だ。緩やかに弧を描いた唇は、そこに牙を内用していることなぞ想像もさせない。
「ははっ。むちゃくちゃな理屈だ」
「真実だ」
思わず噴き出した東矢の笑みにつられて、緊張して強張っていた白夜の頬も綻ぶ。東矢が笑えばこの世のすべてはうまくまわるような気さえした。そんな白夜から覗いた牙はちっとも怖くなかった。チュッと可愛らしい音を立てて、白夜の唇が額から離れていく。
「俺はおなごになることはできないが、些細なことだ。お前の村にだって、昔はそんなこだわりなどなかったはずだ。流行など気にする必要はない」
この不思議の世界の生態系の仕組みは、きっと東矢が知るものとは異なる。実際、目の前にいる白夜だって狐と狼の子だと言う。その白夜が、性差を『流行』だとあっさり切り捨ててしまうのも、基本的な常識が異なるがゆえかも知れなかった。
「五年後にいま一度問おう。俺のことを愛しているかと。そして俺は、変わらぬ愛を東矢に再び告げよう」
気障で、そのくせ隠し切れない愛情を瞳いっぱいに膨らませて、ふんわりと優しく微笑んだ美貌の男は、その自信を示すかのように肉厚の耳を膨らませてピクピクと動かした。何一つ解決していないにも関わらず、澱んだ気持ちが晴れた東矢は、己の身を支えてくれる白夜の胸に脱力するようにくったりと全体重を預けた。
「ところでな、俺はお前に土産があるのだ」
「……綿あめ?」
平安朝建築を模した建物には大層目に痛いショッキングピンクの袋を、白夜に差し出されるがままに受け取る。ツインテールの女の子が魔法のステッキを持ってウインクしているこれは一体どうしたというのか。
「先程向こうの社に行って来たのだ。祭は終わっていたが、露店がいくつか残っていてな、そこで父たちを見つけたのだ。昨日の里での騒ぎはふたりの耳にも当然入っていて、お前はこれが好きなのだと教えてもらった。祭のたびにこれを買い求めていたと」
東矢の脳裏に幼い頃の思い出が蘇る。子どもが楽しめるような催しなんて、今も昔も集落にはなかった。夏の終わりに祖母に浴衣を着付けてもらって、祖父と手を繋ぎながら祭に行くことが本当に楽しかった。露店にぶら下る膨らんだ袋の中から好きなキャラクターを捜して、大好きな綿あめを祖父に強請って買ってもらっていたのは、幼き日の優しい思い出だ。
「ありがとう」
固く結ばれた輪ゴムを解いて、懐かしい砂糖菓子を口に放る。
(あまっ……)
唾液に触れた途端に溶けていく食感は、正しく子ども時代の思い出そのものだ。口に残ったざらめを舌で転がして小さく笑む。
「白夜も食べる?」
手をべとつかせながらもうひとつ千切って振り向きざま、東矢の後ろで穏やかに目を細めているであろう白夜の口に押し込めば、彼は「ギャン!」と驚き鳴いて、一瞬で獣化してしまった。
「あ、味が濃すぎたのかなぁ……」
白夜の体温を残した着物の膨らみが暴れている。東矢が中でもごもごと動く柴犬サイズの白夜を救い出してやって膝に乗せると、怒ったように尖った鼻先で胸を突かれた。
「ははっ。さっきまであんなにかっこよかったのに」
「ガウッ!」
「あはは。ごめんって」
山の夜は夏でも少し寒い。触れたそばから体温を奪うほど冷えた固い板間の上に白夜の羽織を広げて、その日、東矢と白夜は並んで眠った。月の美しい夜だった。
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