3日前から白い虎がついてくる

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 ふと顔をあげる。電車の窓越しに目を凝らしてホームの看板を見ると、乗り換えの駅だった。慌てて立ち上がりドアから飛び出す。  咄嗟に挟んだ指は文庫本の厚さの半分強といったところ。まだまだ楽しみはこれからだ。ほくそ笑む私の後ろでドアが閉まり、電車が発車する。 「え?」  周囲を見回す。虎はどこにもいなかった。私は左手で本を持っている。  電車が加速して走り去っていく。髪が風に巻き上げられ、ホーム沿いに植えられた桜の花びらがはらはらと舞っている。春の夕暮れ。  白い獣が満足げに喉を鳴らす音を聞いたような気がした。
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