3日前から白い虎がついてくる

5/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 目を覚ますと病院のベッドの上だった。起きあがろうとするが体が重い。違う。体を起こす腕がない。いや、ある。両腕はあるが、左腕の感触がない。  右手で枕元を探ってなんとかナースコールを探し出して、意識が戻ったことを知らせた。  看護師さんの話によると、児童公園に転がっている私を通りすがりのワタルくん(4歳)が発見し母親が救急車を呼んでくれたらしい。  時間を確認すると14時。倒れて数時間程度かと思いきや、日付が1つ進んでいた。  今日は金曜日だ。看護師さんから返却されたスマホを確認すると、会社からの着信履歴で溢れている。  やってきた医師に左腕のことを伝えると、あちこちいじりまわされ問診されたあげく「原因不明。改めて精密検査要」と言い渡された。  帰宅してもよいとのことだったので、会計を済ませて外に出る。調べると最寄り駅から自宅まで電車で1時間半ほどのようだ。知らぬ間に知らぬ場所に来ているというのは不思議な感覚だった。  最寄り駅へ歩きながら会社へ連絡して事情を話す。上司はひどく心配してくれたようだった。あるだけの有給をその場で申請すると一瞬言葉に詰まった後、承諾してくれる。  虎は相変わらず一定の距離を保ってついてきていた。近く食われて死ぬかもな、と思いながら無断欠勤を詫びる自分がおかしかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!