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つい、安請け合いをしてしまった。 断らなかった自分が悪いとはわかっているけれど、 時間が経てばたつほどなんだか腹が立ってきて、 夫に愚痴ってしまったのは、金曜の夕食時だった。 「これはね、強制ではないんだけど、ね、  別にほかのことを書いても構わないんだよ。  でも君は、病気のことを必要以上に隠すつもりはないっていうし、  むしろ、早期発見のために健康診断を受けるように、  友人にも話してるって、言っていたから、ね、  今回は、いい機会なんじゃないかと思うんだよ。  君のその、闘病体験を、ね、書いてもらえれば、どうかなと思って。  大変だったけど、もう大丈夫、早期発見すれば、あなたも大丈夫、  みたいなことをさ、ちょこっと書いてもらえれば、ね。  締め切りまで1週間をきってるんだけど、ね、  なんとか頼まれてくれないかな。  って、こんな感じよ?信じられない。  締め切りが来週の火曜日って、週末は家で作文しなさい、  ってことじゃない、ねぇ?」 私的には、結構完成度が高いと思っている、部長の物まねを、 夫は笑いながら聞いてくれた。 そして、お皿を下げ、淹れたてのミルクティーのマグカップを二つ、食卓に並べた。 私の方は、ハチミツ入りだ。 「その上司って、例の、ブチョーアントワネット?」 「そう、ブチョーアントワネット。だ、か、ら、断れなかったの。」 ミルクティーを一口飲む。その優しい甘さと、きっぱり断れなかった自分のふがいなさに、思わずため息が出る。 「あー、美味しい」 「じゃあさ、ブチョーアントワネットの伝説の名言を書いちゃえば?」 思わず笑ってしまった。それはいい考えかもしれない。
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