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部長は、入社当時からずっと私の上司だった人で、考えてみれば、夫よりも長い付き合いだ。 お世辞にもバリバリ仕事ができるタイプではないが、誰に対しても同じように人あたりが柔らかく、人間的に憎めないタイプだと思っていた。 その印象が、ずいぶん変わったのは、病気になってからのことだ。 普段はともかく、いざという時頼りになる、ということが分かって、 今は少し、尊敬の念すら湧いている。 そんな部長の頼みを断ることはできなかった。 そもそも締め切りまで1週間を切っているこのタイミングまで、 会報誌に載せる「社員の自己紹介」のコーナーを誰にも依頼していないこと自体が、おかしいのだ。 きっと、どこかの誰かから押し付けられたのを、断り切れなかったのだろう。 それを、アイツなら、なんだかんだと文句をいいながらも引き受けてくれる、 と思って私の顔を思い浮かべてもらえたのなら、まあ、いいか。 そう思うことにした。
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