4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
No.3,幽霊
「まずは自己紹介からだよね。驚かせて、ごめん。俺は東雲 綾人。幽霊だよ」
彼の一言に僕は驚きを隠せなかった。1歩後ろに下がっては、原稿用紙が、ぐしゃぐしゃになる。
「……は?」
いやいやいや! 幽霊? は? いや、でも……もし彼が幽霊なのならば、疑問点全てに納得がいく。しかし、彼が幽霊だなんて、そんな馬鹿な……と言うか、アニメや漫画とかで幽霊が出るって言う話は大抵好きな相手とか、友達の目の前に現れて~見たいな話が多いじゃないか。青年が友達ならば、まぁ何か色々あったのだろうと理解できるが、僕と彼は初対面だし、他人だ。何故なのだろうか、そして何故僕に彼が見えるのだろうか。
……待てよ、何故僕は彼が他の人には見えないと言う前提で考えているのだろうか。大体アニメや漫画では、そういう展開が多いが、ここは現実だ。そんな確率低いと言っても過言ではない……と思う。ポケットに入っているスマホを取り出しては、カメラを開いては、パシャリを音を立てて彼を撮る。
「え、え!? 何で俺の事撮るの!?」
驚いて考えたかと思えば、急にスマホで自分を撮られたのだから当然驚くか。何て思いながら写真フォルダを開く。撮った写真を見ては、額から汗が流れて床に落ち、それと同時に、は? と言葉を漏らしてしまう。
写真には、誰も写っていなかったのだ。目の前にいるはずの彼はいなく、壁と床を埋めている原稿用紙だけが写されている。
……あぁ、最悪だ。
この行為で大体分かってしまった。他の人には見えない、と。青年は、僕にしか見えないのだと。だって他の人に見えるのならば、写真にも写るはずだろう? そんな事を考えていると段々頭が痛くなってくる。頭を抱えては、そのまま瞳を閉じた。
「え、ちょっ、ねぇ! 無視しないで! 頭抱えてるけど、頭痛いの? ねぇ、ちょっと! 答えて!?」
幽霊の言葉等無視して、僕は軽い眠りに付いた。
*
――息が苦しい。
ここは何処なのだろうか? 目を開けようもとするが、何故か開かない。口を開こうともするが、口も開かない。どうしようと困惑していると、瞳の奥の空間から、とある人物が出てくる。
腰まである黒髪。鋭い瞳と紅色の瞳。眉尻を下げては、悲しそうな顔で此方を見つめてくる。そして軽く笑っては、僕に向けて、こう告げた。
『また、繰り返すのか?』
最初のコメントを投稿しよう!