桜とヴァンパイア

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初めてその人に会ったのは土砂降りの雨の日だった 傘もささずにベンチに座って項垂れているさまは、この世の人とは思えなかった 時刻は真夜中を少し過ぎた頃で、そこは病院の薄暗い中庭にあるベンチなのにも関わらず、その人が仄かに光っているように見えたからだ。まるでオーラを纏っているように。もちろん桜に霊感はない 桜の入院している病室は2階で、ちょうど中庭が見下ろせる位置だった 22時消灯時間も過ぎて、院内は静けさに包まれている 静寂という訳ではなくて、時折看護師が巡回に回ってくるかすかな足音と、何かの器具の音がどこかから規則的に聞こえてくる 入院生活も長くなってくると、昼夜問わず寝ること以外にすることがなく、桜は体調が少しいい時はこっそり夜中でもカーテンの隙間から外を眺めている ここは市街地から離れた場所で、周囲にはほとんどお店らしきものはない 田園風景が広がり、ちらほら家があるぐらいだ お店のネオンがないので、晴れた日は夜空に満点の星空が見える 眠れない夜はひつじの代わりに夜空の星々を数えるのがひそかな楽しみでもあり、暇つぶしでもある
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