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田村が顔を歪める。僕は笑いをこらえて、ぬいぐるみの隣に座り、肩を組んで、
「まあ、ぬいぐるみみたいに可愛いってことなのかもな?」
〈やめてよー〉
「お前も飲めよ。全然飲んでないじゃんかよ」
〈私は飲めないんだよ〉
「大丈夫か? お前」田村が言った。少し声が震えていた。
「俺はいつだって正常だよ。正常、正常」
呂律が少し怪しくなってきた。脳みそがふわふわしている。ぬいぐるみを抱き寄せ、
「なあ、ゆかりー」
〈やめてよー〉
「いいじゃんかよー」
〈だめだよー〉
いよいよ笑いをこらえきれなくなってきた。そろそろネタばらしをしようか。いや、もうすこし遊んでみようか。ビールを飲む。ほとんど口へ入らず零れた。饐えた臭いのするTシャツがびしょびしょに濡れる。おかしくて仕方ない。笑いが止まらない。ゆかりを強く抱きしめる。目が零れ落ちた。口からワタが飛び出た。
「いい加減にしろよ」田村が怒鳴った。僕はゆかりを胸にうずめながら、田村を見つめた。まずい、やりすぎた。
「ごめん、ふざけすぎた」
「今日は何月何日だ?」
「はあ?」
言っている意味がわからなかった。聞き間違いかと思った。
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