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「いやいや、どうみても女の死体だろうが」
〈そんなことないよ、私はくまのぬいぐるみだよ〉
僕はゆかりを見つめた。口から飛び出たワタを震わせながら、
〈ゆう君は私がいないと眠れないもんね〉
「そうなんだよ、お前がいないと眠れないんだよ」
「やめろよ。気持ち悪い。嘘つくならもっとマシな嘘つけよ」田村が喚く。
「うるさいんだよ、さっきから静かにしなさい!」
母が怒鳴り込んできた。手には包丁を持っている。その背後には鬼の形相をした父がいた。
〈ごめんなさい〉
「すみませんでした」田村が頭を下げた。
僕は舌打ちした。何だよ、こいつらにも見えてるのかよ。僕はタバコの不始末で燃やしてしまった仏壇に目をやった。黒焦げになった両親の位牌がそこにはあった。
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