2人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の12時過ぎ。
自宅に帰り着くなり、俺は玄関にへたり込んだ。
「あー……腹、減ったなあ」
疲労感と空腹感でつぶれてしまう一歩手前だった。
そんな俺の視界に大きめの段ボール箱が映り込む。
「あ……」
今日の昼、母親から送られてきてそのままにしていたものだった。
思わず乱暴にその箱を開ける。
中には、思った通り沢山のリンゴが入っていた。
いずれも、規格から外れた不恰好なリンゴだった。
一番手前にあった小さなリンゴを手に取って、そのままかぶり付いた。
そしてじっくりと味わう。
「美味い。……ありがてぇ」
優しい甘味が身体中に沁み渡り、俺は情けない顔で笑った。
(終)
最初のコメントを投稿しよう!