ありがた味

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なんとか大学の講義には間に合った。 出席にうるさい教授だから、間に合って良かった。 安堵してほっと息をついたとき、ふと腹が減っていたことに気付いた。 (あー……朝は寝てたし昼も何か食う余裕なんか無かったもんなあ) ラーメンの一杯でも食べたい気分だった。 が、中途半端な時間だから学食なんてとっくに閉まっている。 夕方5時からはコンビニでアルバイトの予定だ。 (バイト前に腹に何か入れておきたいよなあ。  でも外のラーメン屋だと安くても700円はするよなあ) 貧乏学生にとって一食700円は安くない。 少し考えてから、俺は通りすがりのコンビニに立ち寄った。 そこでメロンパンと牛乳を買った。 約200円。バイト前に適当に腹を満たすにはこれぐらいで充分だろう。 コンビニ袋をぶら下げて近くの公園に入る。 夕方の、人気の無い公園だった。 ベンチに座っていざメロンパンを食べようとした、その時だった。 「ん?」 どこから湧いてきたのか俺の肩に一羽の鳩が止まっていた。 その目線と嘴は明らかに俺の手の中にあるメロンパンを狙っているようだった。 「何だ、お前も腹減ってんのか?」 軽く話しかける。 それから、気まぐれを起こした俺はパンの端切れを少しだけ千切って鳩にあげた。 それが間違いだった。 ─刹那、四方八方から無数の鳩が姿を現した。 「え? え? お前らどこに居たん?」 戸惑う俺をよそに、鳩たちは俺を取り囲む。 そのパンを全て寄越せ、と無言の圧力を掛けてきた。 情けない話だが、その光景には恐怖心を覚えた。 たまらず、俺は持っていたメロンパンの全てを細かく千切って明後日の方向にぶん投げた。 すると、俺の周囲を包囲していた鳩たちが一斉にその方へ向かっていった。 各々夢中になってメロンパンを貪る。 (カツアゲされた。鳩に。俺、一応人間様なのに……) 鳩の群れから解放された俺は、空腹のままバイト先のコンビニへ向かう羽目になった。
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