トメキチの娘

6/33
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
 サメに齧られ、手足が無くなっていくのは、すぐには死ねずに痛そうだから、いっそ、頭から一気にいって欲しいと、修は密かに願った。  しかし、サメは来なかった。  けれども、仰向けに浮いている修の背中に何かが当たったのだ。  例えば、ダイバーなどの人間に慣れたイルカが、修を浜まで運んでくれて、助けてくれるなんて事があるかも知れないのではないだろうか。  しかし、じっとしている修の背中にそっとまた触れたのは、イルカのゴムのような皮膚ではなく、それはまるで、女の乳房のような感触だったのだ。  驚いて修は、立ち泳ぎの体勢になった。  するとどうだろう。  暗い海の海面から、少女とも言える若い女が顔を出したのだ。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!