手をつなぐ

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「ねぇ、どうして雨が降るの」  ある日、葉月くんは店主にそう尋ねていた。 「僕は雨が嫌いなのに、仕事の日に限って雨が降るんだ、全く。これじゃ一冊も本が買えないじゃないか」 「毎日本を買うわけじゃないでしょう、いくら古本屋で働いているといっても」  店主は少し笑いながら、コーヒーをたてる。 「でも、いつ何時買いたくなるか、分からないのに。僕と本との出会いは、まさに一期一会なのになんですけレ、ド。あれ」 「え、何て? はは、でも一期一会、そりゃその通りですねぇ、葉月くん」  はいどうぞ。  店主は葉月くんの前にコーヒーを差し出す。黒いハットに黒い上っ張り、黒いダークスナフキンのような店主は、笑うと中国の少年のようになる。 「何だか意味わかんなくなっちゃった。難しいことわざだったから」 「はは、そうですね」 「でもことわざの本って面白いよ。難しいけど、いいことが沢山書いてあるし」 「そうですか。葉月くんは勉強家だ」 「ふふ。そうでもないよ。何しろすぐ忘れちゃうんだから」
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