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リリカ、運命の人と出会う
「週末、友達のサカキが来るんだ。いいかな?」
「はい! 昼間はレストランでアルバイトがあるので、リリカはいません! そのまま夕方から地下アイドル活動なので、帰りは遅くなります!」
サカキには、妹と住んでいると話しているから、多少女子を感じるものが家にあっても大丈夫だ。
♢♢♢
サカキが来た。
朝、剣道の稽古があってそのまま来たらしいので、剣道の荷物を持っていた。
「それが剣道の道具入れなの?なんかオシャレだね」
竹刀はナイロンのファスナー付きの袋に入り、防具はスポーツバッグに収まっている。
「ああ、パッと見、剣道の道具が入ってるとは思えないよね」
サカキは、同じ学部だ。
入学当初から仲が良かった。
今日は、サカキがおすすめのアニメを一日中見る。
最終話まで一気見する予定だ。
「鬼と剣士の戦いだよ。戦いの映像がキレイでね。主人公たちの努力、友情が泣けるんだ」
「へえ。ラスボスは、女の子なんだ」
「そうなんだよ。まあ、これがなかなか、すごいラストになるらしいよ」
サカキは、序盤はすでに見たらしい。
早速、動画を再生する。
舞台は平安時代の都。
人を喰う鬼が街に現れ、都を警備する検非違使たちが特殊な刀を使って退治していく。
最初は、通り魔的な鬼を退治していくが、徐々に鬼たちは都の重要人物たちを組織的に襲い始める。
最初は対立しがちな主人公側もまとまり始め、鬼を知略で追い詰めていく。
お菓子をつまみながら鑑賞する。
「平安時代ものって、なかなか見ないかも……。俺があんまりアニメに詳しくないのもあるけど」
「俺も詳しくはないよ。このアニメも有名じゃないし。たまたま剣道やってて、剣士や武士が出るものに興味があるから知ってる感じ」
アニメの最後は、なんと、主人公が仲間の女の子と恋仲になり、その女の子が鬼のラスボスだったというオチだ。
しかも、彼女は主人公の子を宿し、出産する。
主人公の仏神から授かった力と、彼女の鬼の力が合わさった最強の敵が出来上がってしまう。
主人公は彼女を説得しようとするが、彼女は母として子を守り、主人公の仲間に斬られる。
そして、主人公は、彼女の面影が残る自分の子を斬るのだ。
「鬱っ!!」
俺は最終話のエンディングを見ながら、泣いた。
「なんでそんなに共感してるんだよ。」
「俺、ハッピーエンド派だから。主人公はさ、夫にもなれず、父にもなれず、検非違使としても鬼と交わったからって出世しないんだよ? 何? 何なの? こんなに頑張ったのに報われないなんて。作者が鬼だよ」
「ああ、この作者はBL作家で、このマンガは唯一BL作品じゃないんだって。女と交わるとこんな目に遭うぞ、っていうメッセージじゃないかって噂がある」
おいおい、作者に何があったんだよ。
感想を言いながら見ていたら夜になっていた。
サカキは帰って行った。
リリカもそろそろ帰ってくる時間だ。
夕飯の準備をする。
今日はカレーだ。
リリカは味音痴で、その結果、なんでも食べる。
味音痴に関しては「前世で人間を食べ過ぎた罰ですかね?」という自己分析だ。
部屋を片付けてたら、手帳を見つけた。
さっきサカキが予定を見るために取り出して、そのまま置きっぱなしにしたのだろう。
サカキに電話をかける。
手帳なら、すぐ使いたいかもしれない。
♢♢♢
スマホが鳴って、一瞬気をとられた隙に、間合いを取られた。
だが、最初の一撃で、かなり深く腹を裂いた。
鬼は、腹を片手で押さえながら、片膝をついた。
腹からぼたぼたと血が垂れる。
制服の、髪の長い女の姿だ。
もう一度斬りかかる。
深手を負わせたとはいえ、相手は鬼だ。
初見殺しができなかった。
殺されるかもしれない。
それでも、戦わなくてはならない。
女は、太刀筋を避けるために後ろに飛び上がり、塀の上に着地した。
着地の衝撃で、口から血を吹いた。
はらわたが出ないように押さえ込んでいる。
女はさらに飛び上がり、電柱のてっぺんを蹴り、民家の家根に飛び移って逃げた。
♢♢♢
リリカが帰って来ない。
電話にも出ない。
ああ見えて、リリカは予定通りに行動するタイプだ。
何か事件に巻き込まれた……いや、事件を起こしてるのではないだろうか?
チャイムが鳴って、ドアスコープを覗くと、サカキがいた。
手帳を取りに来たんだろう。
ドアを開けた。
「ごめん、ちょっと忘れ物をした」
「手帳だよね。取ってくるよ」
「あと、トイレ借りてもいいかな」
「ああ、どうぞ」
俺はリビングの机に置いていた手帳を手を取り、振り返った。
サカキが、刀を俺に向けている。
刀にはすでに血がついていた。
「サカキ……? どういうこと?」
「お前に妹はいない。お前の高校の同級生に聞いて確かめた。つまりお前は、あいつが何者かわかった上で一緒に住んでいたってことだ。そうだろ?」
リリカのことだ。
この状況……サカキは、ただ者じゃない。
リリカについて調べてたんなら、この血はきっとリリカのだ。
リリカが簡単に斬られるわけない。
それくらい、サカキはヤバいってことだ。
「……そうだ。彼女は、俺の命の恩人なんだ」
リリカが死んだのか、そうじゃないのか。
死んでたら、俺も仲間とみなされて殺されるかもしれない。
まだ生きてたら、俺に利用価値がある限り殺しはしないかもしれない。
「最近、ここ近辺で変な死人や怪我が多くあった。死んでるはずなのに動いていた女、破裂する男、急に車が大破したり、小悪党が不自然な怪我をするという事件が立て続いた。だから、俺に人外退治の依頼が来た」
サカキは、そういう生業をもっていたのか。
「改めて調べ始めたら、近くにいたお前から人外の臭いがした。今日、家に来て確信した。お前の同居人が犯人だ」
その通りだ。
説得……が効くような雰囲気は感じない。
力づくでの現状打破は、土台無理だろう。
「お前は、あいつの仲間なのか?」
サカキが鋭い眼差しを向けてくる。
「……さっきも言っただろ。命の恩人だ。リリカは、俺に匿ってほしくて一緒に住んでたわけじゃない。リリカは、人間社会になじんで、自立しようとしていた。最初は無茶苦茶だったけど、徐々に正義の味方になった。彼女は、自分の力を善良に使っている。退治する必要はないよ……」
「人外が、人間社会に関わること自体が問題なんだ。人外を甘く見るな。お前の生半可な考えのせいで、危険にさらされる人間がいるんだぞ」
俺は、拳を握った。
「それは違う。リリカは、危険にさらされる人間を無くすために努力していた。いじめで自殺を考えていた俺を救ってくれた。リリカは、そのままなら被害者が泣き寝入りしそうな場面で代わりに戦ってくれたんだ。誹謗中傷、性犯罪、呪い、放火、赤ちゃんの置き去り、あおり運転、無差別殺傷。もしこれらがそのまま実行されてたら、被害者は、どうしたらいいんだ。つけられた傷は消えない、死んだら生き返らない。仮に加害者が罰を受けても、何も戻らないよ。なあ、リリカの、何が悪いんだ?」
俺は、死にたかったあの頃の気持ちを思い出していた。
「人外に頼れば、そういう勧善懲悪を求めたくなる。それが問題なんだ。俺たちは、人間なんだ。悪人もいる、理不尽もある、死ぬほど辛いこともある。それを受け入れるのが人生だ。人生から目をそらさせる人外という存在は、危険なんだ」
サカキは、表情ひとつ変えずに言った。
「サカキ! お前は、被害者になったことがわからないからそんなことが言えるんだ! こんな辛い思いを、なんで自分がしなくちゃいけないんだって! その苦しみをわからないくせに! 偉そうに言うな!」
「……いつでも正しい人間なんていない。誰だって間違う。本当の意味では、人は人を裁けないよ。いくら多くの人がリリカを支持しても、それは無意味だ。強い力に目が眩んでいるだけだよ。人外に頼るな」
「それは、お前だって同じじゃないか! こうやって、暴力を背景に話している! リリカの気持ちも聞かないで!」
「…………」
「リリカは、運命の人と結ばれて、お母さんになるのが夢なんだ。自活するために、ちゃんと働いてもいる。下手な人間よりよっぽどまともだよ!」
サカキは、刀を下ろした。
「……リリカが、逃げ込みそうなところは?」
「知らないよ、そんなの。リリカは俺にしか正体を明かしてない。ちゃんと人間生活をしてたんだ。逃げることなんて、考えてなかったよ。だから、そんなところ準備してない。」
「……そうか」
サカキは、刀を鞘に収め、荷物を持ってアパートを出て行った。
♢♢♢
俺は、食料と応急手当に使えそうなものを準備して、リリカのスマホに入れていたGPS機能アプリで居場所を確認した。
リリカの地下アイドル友達が、殺人事件を起こしたペンションにいる。
今は売地になっていたはずだ。
俺は急いでそこに向かった。
到着すると、玄関のドアノブ部分が破壊されていて、中に入れた。
「リリカ、俺だ。助けに来たよ」
中に入っていく。
2階に上がり、以前二人で泊まっていた部屋の中を覗き込む。
何もない四角い部屋で、リリカが壁際に座っていた。
「リリカ……大丈夫?」
リリカに駆け寄った。
服は、血で真っ赤に染まっている。
「お腹を……斬られてしまって……」
「包帯を巻いたらいいかな?」
「はい……。髪で縫い合わせたので、なんとかくっついていますが、霊刀の力のせいで……治りが遅いです。体は、人間ですから、脆いので……」
俺は、リリカの服をめくって、お腹の周りに包帯を巻いていった。
用意した包帯では足りなかった。
タオルを当てて、サランラップで巻いていく。
車が地震や雪で立ち往生した際の、お役立ちグッズ的に積んでいたものだ。
「水、飲む?」
「はい……」
紙コップに入れて飲ませる。
口元の血を拭ってあげた。
「着替えも持ってきてるけど……」
「とりあえず、大丈夫です。ジッとしてますね……」
リリカは荒い呼吸をしている。
俺は、リリカの横に座った。
リリカはもたれかかってきた。
「……リリカ……死なないよね……?」
「この傷では死にませんが、次に彼と会ったら死ぬかもしれません……」
「どうして?リリカはあんなに強いのに。」
「霊刀、鬼切丸。前世で、私を葬った刀です。あれをかざされると、見た一瞬だけ、動けなくなるのです」
「……それって……彼がリリカの、今世の運命の人ってこと……?」
リリカは頷いた。
「私の前世は……人間から”鬼”と呼ばれていました。当時は、ちゃんと家に住んでいる人と、その辺で寝っ転がって暮らしている人の差が激しくて。最初は捕まえ易い人から食べていたんですが、徐々に、ちゃんと家に住んでいる人の方がおいしいと気づいたんです……。そうしているうちに、今でいう警察官みたいな人たちに追い回されるようになりました……」
「……彼は、俺の、大学の友達なんだ。サカキ、っていうんだ。サカキの前世は、その警察官だったってこと?」
「はい……。彼は……屈強な男たちを率いて、私をうまく山に追い込みました。そこには罠が仕掛けられていて、力を奪われた後、斬られました。あっぱれでしたねぇ……」
リリカは昔を懐かしむように、穏やかな声で語った。
「せっかく出会えたのに……また殺し合いだったね……」
「はい……私の想いは、伝わらなさそうです……」
「もう一度、サカキが来たら、どうするの……?」
今までのリリカは、弱い者のための戦いだ。
今回は、自分のための戦いだ。
もし、サカキを倒したら、今までの正義とはちょっと違う。
正義と正義。
俺にとったら、恩人と友人だ。
「……来ましたね、もう」
ドアのところに、サカキが立っていた。
鬼切丸が薄っすらと輝いている。
さっきと同じ服装だ。
黒い服だからあの時は気づかなかったけど、よく見たら返り血を浴びていた。
どこかに隠れていて、俺を尾けてきたんだろう。
「俺は、生まれ変わってもお前と戦う運命らしい」
サカキは、ゆっくりと部屋に入ってきた。
俺は、リリカの前に立ち塞がった。
サカキは刀を下ろしたまま、足を止めた。
「リリカは、前世とは違う生き方をしている! 体も人間だ。どうして、今のリリカを理解しようとしないんだ!」
「その体は、乗っ取った体だ。体が死んでも、また誰かの体を奪うことができる。それは、人間の理ではない。根本が化け物なんだ。化け物は、人間とは暮らせない」
確かに、リリカの体自体は、幼い梨々香の体だったはずだ。
でも梨々香が死んだのは、糞親のせいだ。
リリカの都合に合わせたわけじゃない。
「……サカキ、お前の言いたいことはわかるよ。お前が、人間のために体を張って戦っているんだってこと、本当は、人間側として感謝しなくちゃならないんだと思う」
「………」
「でも、だからって、リリカの今世の生き方を否定するなんて俺は納得できない。頼むから、簡単に暴力だけで解決するのはやめてくれ。わずかな間だけでいいんだ。本当の、リリカの暮らしを、見てくれよ!」
「慎吾くん……」
リリカが、俺の名をつぶやいた。
今までも、何度も俺の名前を呼んでくれて、たくさん話をした。
リリカは子どもみたいに何でも聞いてきて、納得できるまで質問してきた。
人間生活を楽しんで、よく笑った。
俺は、リリカとの生活が楽しかった。
「リリカは……サカキの前世が、好きだったんだよね?」
俺は、後ろにいるリリカに話しかけた。
「え?あ、はい……」
リリカは、急に話を振られて、驚いたように返事をした。
「サカキ! リリカと、結婚しろ!」
「は? 何を言ってるんだ……?」
サカキの顔が曇った。
「リリカは、前世でお前に殺されて、でも、自分をそこまで追ってくれたお前に惚れたんだ。今世、巡り合ったら、お前と結婚して、家庭を築くのが夢だったんだ。サカキがリリカと結婚すれば、リリカが悪さをしないってわかって人間社会も守れるし、リリカの夢も叶う。誰も悲しい思いをせずに、目的がかなうだろ?」
「……化け物と、結婚なんて……」
サカキの声が少し震えている。
「殺すくらいなら、結婚なんて、簡単だろう?」
サカキが無闇に攻撃してこないのは、俺がいるせいもあるが、さっきのリリカの言い方だと、リリカが怯むのはおそらく霊刀を見た一瞬だけなのだ。
これだけ時間を稼げば、怪我をしたリリカでもサカキとやり合えるかもしれない。
サカキだって、仲間がいた前世とは違う。
本当は、こんな自分が死ぬかもしれない戦いをしないで、ただの大学生として過ごしたいはずだ。
『これは、アニメだからいいけどさ。鬼の強さを示すために、最初に簡単に殺される検非違使がいるんだよ。そういうモブにも家族がいたんじゃないかって思うと、同情しちゃうんだよね』
そう、言っていた。
サカキは、正義感だけで戦える冷たいヒーローではない。
サカキだって、現代人だ。
「リリカは、ちゃんと今の社会で生きていける。俺が保証する。だからお前も結婚して、リリカを間近で見てくれよ。なんなら、お前の人外退治にリリカは協力できるだろうし、俺も手伝えることは何でもするよ」
サカキから、闘気は消えた。
「……慎吾……お前こそそこまでするなんて……リリカのことが、好きなんじゃないのか……?」
「……俺は……」
リリカのことが、好きなんだろうか?
「……リリカは……命の恩人で、友達だ。かけがえのない人だよ……」
俺は、なぜだか、涙が出た。
♢♢♢
サカキは、考えさせてほしい、と言って部屋を後にした。
俺は急いでリリカを車に乗せ、アパートに帰って寝かせた。
リリカに意識はあったが、回復に力を注いでいるらしく、喋らなくなった。
3日後、リリカのお腹は、ようやく繋がった。
「慎吾くん! 助けてくれて、ありがとうございました! おかげで、体はなんとかなりましたよ!」
そうは言うが、まだ寝たきりだ。
サカキは、本当にすごい奴らしい。
「良かったよ……」
「……サカキさんからは、何か連絡は来ているんですか?」
「いや、何も。まあ、リリカが回復したら、こっちからちゃんと知らせて、決着はつけないと、とは思っているよ」
「あの様子じゃ、私との結婚は嫌そうですね」
たぶん、そうだろう。
「私、サカキさんとの結婚は諦めます」
「え? そうなの?」
「サカキさんにとって、私は化け物ですからね。私との結婚は、サカキさんの幸せにはなりません」
「そっか……」
リリカが諦められるなら、それでいいだろう。
「……サカキに、今の気持ちを聞いてみるよ」
俺は、サカキに電話をかけた。
♢♢♢
リリカはまだ動けないが、話せるようになったことを伝えた。
『そうか、わかった』
「リリカとの結婚……考えてくれた?」
『その話だけど……急に結婚と言われても、俺にも俺の人生があるから、やっぱり無理だよ。ただ、確かに、リリカがこれまで人間に寄り添って生きてきたなら……無闇に退治するのはよくないかなって、思った。だから、俺の人外退治をリリカと慎吾に手伝ってもらいながら、リリカを俺が監督するのはどうだろうか?』
それがいいだろう。
前向きに返事をして、それをリリカに伝える。
リリカも承諾した。
♢♢♢
俺とサカキが大学を卒業して、1年が経とうとしていた。
サカキは、探偵事務所を開いた。
人探し、ペット探し、浮気調査。
表の仕事はそうなっているが、裏の仕事は未解決事件の犯人を追ったり、証拠集めだ。
こういう事件には、人外が絡んでいることも多いらしい。
お客さんは被害者だったり、こっそり警察だったりする。
リリカは、助手として雇われている。
リリカの嗅覚と、人外知識で百人力だ。
俺は、警察内の科学捜査官になった。
大学時代、三人で行動しているうちに自然に興味が湧いたのだ。
ちなみに、まだリリカと俺は一緒に暮らしている。
「リリカ、サカキのおかげで人間社会で正式な正義の味方になれたね」
「はい! 事件の方から寄ってくるので、効率がいいですね!」
「お嫁さんの夢の実現は、ちょっと先延ばしだけど」
サカキの様子を見ると、リリカを恋愛対象には見ていないようだ。
「相手があることですから! 無理はしません! あ、あとこれ、慎吾さんに。」
リリカが、箱を取り出した。
「今日はバレンタインデーなので、チョコレートです!」
「へえ、ありがとう」
そう言えば、今までバレンタインデーにリリカからチョコをもらったことがなかった。
”好きな人にチョコをあげる日なんだ”と初めて教えたとき「それは!プロポーズってやつですね!」と、鼻息を荒くしていたのは覚えてる。
大人になって、義理という概念を覚えたんだろうか。
「これからも、リリカをよろしくお願いします!」
リリカはにっこりと笑った。
「そうだね。よろしくお願いされます」
俺も笑顔で返した。
― 完 ―
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