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「あー、お腹すいたね!」
予めランチしようと決めていた最近話題のレストラン。順番待ちで昼下がりの時間帯になりやっと席に案内され、嬉しそうにメニューを眺めながら彼女が言った。
「たくさん待って疲れたよね…ここのお店エビフライが人気みたいだよ。いろんな大きさのエビフライがあって、この1番大きいのはどんなだろうね。」
彼女はメニューを凝視しながら眉間に少し皺を寄せ悩ましげな表情になる。そんな顔も可愛い。
「じゃあ僕それにしてみようかな。」
「琉くん良く食べるもんね!じゃあ私は中位のにしよ。」
そういうと彼女は「すみませーん」と店員を呼び、エビフライ定食の中と大を注文した。
「ご飯のあとはなにする?」
と言って彼女は携帯の画面を覗き込む。
映画とか?買い物とか?この近くには何があるかな?と言いながら、検索しているようだ。
「公園で散歩でもしない?近くに広い公園があるみたいなんだ」
このレストランにしたのも、ランチの後公園で彼女とゆっくり過ごしたかったからだ。
「公園、いいね!まだ桜は咲いてないけど、今日は散歩が気持ち良い気温だよね。」
ニコッと微笑むと、彼女は携帯をテーブルの上に置く。ころころと変わる表情が彼女の性格の忙しさを表していてそれがまた愛おしい。
「エビフライ定食中と大です。」
と料理が運ばれてくる。
そのエビフライの大きさに彼女が「すごい、これ1匹のエビなの?!」と目を輝かせている。確かに今まで見たどのエビフライより大きくて、サクっと揚がった見た目に食欲がそそられる。
「いただきます。」と言って彼女がエビフライをパクリと食べる。美味しい!という顔をしている。
僕のエビフライは大き過ぎて齧り付くことができず、ナイフとフォークで一口サイズに切って口に運ぶ。サクサクの衣とエビの味。大好きなエビフライだ。美味しい。
でも、あれ?
「琉くんのエビフライ大きいね!味も大味?あんまり食べてないみたいだけど、美味しい?…
それとも体調悪い?」
彼女が少し心配そうな顔でこちらを覗き込む。一口食べるまでは確かにお腹が空いていたのに、いつもみたいに食が進まない。
「大丈夫!あんまりお腹空いてなかったかな。」
理由はなんとなく分かっているけど、考えれば考える程恥ずかしくなって、箸が進まなくなる。
「本当に大丈夫なの??」
大丈夫、大丈夫と言いながら、少しずつエビフライを口にするが、いつもなら食事を残すことはないのに、結局ほとんどのエビフライを残してしまった。一方、彼女は完食していた。
店を出ると心配そうにしている彼女の手をギュッと握りしめ、公園の方へゆっくりと歩く。
側道の桜には蕾がたくさん付いていて、春の気配を感じる。
暑くも寒くもない、心地良い風が吹いている。
公園に着くと、自販機でコーヒーとカフェオレを買って2人でベンチに腰掛かる。
周りに人の気配はなく、風の音と鳥の鳴き声だけが響いている。風が気持ちいいな。
「風が気持ちいいね。」
腰掛けたまま伸びをして彼女は言った。同じ気持ちを共有できたことが嬉しい。
「今日さ、本当に泊まりにいっていいの?」
唐突に聞いてしまった僕をちょっと驚いた顔で見ると、彼女はニヤリと笑った。
「もちろん。
もしかして…それで琉くん、今日ちょっとおかしいの?それで食欲なかったの?」
と揶揄ってくる。
「そうかもね。緊張してるんだよ。」
「なににー?」とニヤニヤしながら、赤面してる僕の顔を彼女が見つめてくる。
公園でゆっくり過ごして気持ちを落ち着けたかったのに、全く落ち着かない。
彼女の顔を見つめ返す。やられっぱなしじゃいられない。
「瑠夏ちゃん、好きだよ。」
じっと見つめると彼女は少し赤面し照れた表情になる。
「私も大好きだよ。琉くん。」
と言って彼女は僕の唇にキスをした。
やっぱり彼女の方が一枚上手だった。
その後僕と彼女は手を繋いで公園を一周して、電車に乗って彼女の家の最寄り駅で降りた。駅のコンビニで夕飯と必要な物を買って彼女の一人暮らしの家までまた手を繋いで歩いた。
そしてそのまま彼女の家で一夜を共にした。
別に僕も彼女もお互い初めての経験でもないのに、ガチガチに緊張した僕はなんとか彼女との初めてをやりきった。ベッドで彼女を抱きしめうつらうつらしながら、多幸感に包まれた夜を過ごした。幸せな1日だった。
眩しい朝の光を浴び、帰路に着く。
彼女は駅まで送ってくれると言ったけど、別れ難くがなる気がして断った。
駅に向かって歩き、彼女の家が遠のくに連れ、空腹が襲ってくる。
とても満ち足りた空腹感だ。
「あー、お腹すいた!」
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