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VI
***
「ーーそれで、その力也さんという方とずっと暮らしたのですか?」
「いや、力也さんはすぐに海外に帰った」
あの後、力也さんと暮らせたのは数ヶ月に過ぎない。あれから凡そ10年近く。僕はその後の人生でも色々あったけれど、あの時間は代え難い時間だったと今でも思う。
力也さんはチェルシーさんの死後、絵が描けなくなったことでリハビリとして日本に帰って来ていたらしい。風の噂で僕のことを知って一時期面倒を見てくれていたけれど、絵が描けるようになったとわかるや否や海外から沢山のオファーが来てそれどころではなくなった。てんてこ舞いというやつだ。
“光高、学校辞めて俺のマネージャーになるか?”
“ならない”
もしかしたらあのときyesと言っていたら違う人生があったのかもしれない。でも、僕はあのときの選択を後悔はしていない。
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