お腹が空いた。

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お腹が空いた。

 ふあー!  忙しかった!  さすが金曜日、問い合わせが朝からひっきりなしだ。ここは平日だけのカスタマーサービスだから、週末に完結させたくてお問い合わせをしてくるお客様が多い。  とは言っても、国際宅配便っていうのはそう簡単に送れない。いや、お気持ちはわかる。わかるのですよ。  例えば。 「カナダにいる孫に美味しいお菓子を送ってあげたいんだけど」 「フランスに薬とかサプリ、送れますか? 今日送りたいんですが」  とかのお問い合わせは非常に多い。  んが。  食料品や調味料は国際宅配便では基本的にNGだ。というか、広義で言うなら口から体内に入るものは全部送れない。  集荷だって、国際だと日本や各国の税関向けに書類が必要になってくる。その書類には段ボールの中の全ての商品を品名から値段から重さから書きださないといけない。  そしてその書類が間違っていようものなら、税関を通過できない。書き直してデータでもらうという手もあるが、個人が送る荷物は細々(こまごま)としたものが多いから、事前準備に時間が必要となってくる。  もちろん、慣れたお客様なら『書類用意してます、荷造りしてます』でスムーズに話が進む事はあるが、国際宅配便は現金での受け付け、着払いができない。国によって商品にかかる税金の額が違うし、税率も違うから事前の現金での受け付けができないのだ。  何とかしてお(ちから)になりたいけど、こればっかりは、ねえ。  今日は初めて国際宅配便を使いたい、というお客様からの電話やメールが多かった。しかも半分以上はお断り、お取り扱いできないお品物。  なるべく穏便にクローズを、とできるだけ丁寧に説明し、ご家族やお友達の熱く優しいお気持ちにジワリと来て、こっそりと(囁きボイス)他業者を案内したりと、スタンドプレイ(自分勝手)(まじ)えて頑張ってみた。  が、結果はお客様に何度か怒られ、チーフに他業者案内が見つかって怒られ、チーフに一時間はこってり絞られる予報、確率90%の模様。  とほほ、そりゃやっぱり怒られるわな。  博多明太子をニューヨークの新婚のお孫さんに送りたいって言ってたお婆ちゃん、本当にごめんなさい。通販経由で送って下さい。  ああ、博多明太子……久し振りに食べたいなあ。  お腹減った。お昼、何食べよ。  ゴリゴリにガリガリと精神を削られる案件が多くてへとへとだ。明太子……も食べたいけど、甘いものも食べたい。今日は一時からご飯のシフトだから、ランチタイムの混雑はあんまし気にしなくていい。どっか明太子が食べれるお店この辺りにあったかな……ヤバい、明太子が頭から離れなくなってきた。 「……さん」  後で調べてみよっかな、明太子のお店。  デパ地下……ん? 「真奈子さん」 「は、はい! 何でしょうチーフ!」  ヤバ!  違う世界に旅立ってたか?! 「顔、セクハラ」  ……What?!  
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