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しかし、痛みと衝撃はいつまで経ってもこない。ん?と目を恐る恐る開ければ、視界には知らない男性。しかも鳴をお姫様抱っこしている。
え?私なんでこんなんなってんの?と鳴は目をぱちくりさせた。
「おい!鳴大丈夫か!?」
「野畑さーーーん!私無事です!この殿方に助けていただきました!!!」
遠くで野畑の声が聞こえる。鳴は元気よく無事である事を伝えて、また視線を男性に戻した。
いつまでお姫様抱っこされてればいいのでしょうか……と見つめると男性は鳴が無事と分かってホッとしたように笑ってから、そっと地面に降ろす。
「あんた……いや、なんでもない。無事で何よりだ」
「はい!本当にありがとうございました!」
「いや……困ったらいつでも俺を呼んでよ、お嬢さん」
男性は優しく微笑むと鳴に背を向けて歩き始めた。去っていく姿に鳴は彼がヒーローに見えた。まるで物語の王子様のように颯爽と現れた彼はまさに推しの暁斗様の姿に被ったからだ。
助けてもらえたのに違う男性を思い出してしまうなんて私って最低と思いつつ、でもかっこよかったなと素直に鳴は思ってしまった。
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