第1話 ひつじはカラスに出会いました。

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第1話 ひつじはカラスに出会いました。

 出版業界に勤めて4年目の白楽鳴(はくら めい)は、名前こそ羊を連想させていたがそれ以外は何の特徴もなく、ただ明るめのショートの茶髪が印象的だった。  その他はどこにでもいる中肉中背の普通の女性。配属されたのが主に事件性のあるものを取り扱う部署だった為に日夜怪しい現場を駆けずり回っていた。  本日も上司の野畑寿彦(のばた としひこ)と共に取材訪問していた。  直属の上司であり新人の頃からお世話になっている愛妻家であり、成人する愛娘がいる50歳過ぎの中年男性。目尻のしわさえ大人の男性の色化になる。  今回の調査は難航していた。それは現場が意外にも老朽化していたこともあり、憧れの上司である野畑の前でいつも以上に張り切っていたのもある。  元政府御用達の料亭だった場所で何か目星い物はないか見回ると老朽化の影響からか真っ二つのシャンデリアが鳴を目掛けて落ちそうになる。  あ、これは死んだと思い愛しの人物である鳴が足繁く通っているカフェのマスターの“暁斗(あきと)”の名前を叫ぶ鳴。
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