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私たちは彼女を外に置いていたカートの上に運んで長かった今日を終えようとしていた。
「お姉さん、あのさ、また…また、遊びに行ってもいい?あ、もちろんこれも返しに行くけど!」
「え?…えぇ、いつでもいいわよ。だって君みたいな、子供たちのためにひらいてる食堂だもの」
「ううん。今度はもうこんなことしなくていいよ。ただ、お姉さんとお話ししたいだけだから。だってお姉さん、凄く優しいもん。優しくて…凄く、いい人。だからまた会いたい。…じゃあ、またね!」
恥じらいを見せた彼は、私の返事を聞かぬまま歩き出した。
だから私も、返事は心の中でする。
またいつか、会えますように。
彼に届くように、背中に手を振った。
そして彼女にも、送りたい言葉があった。
…最後に、なんて言えばよかったのか、分からなかった。こんな経験は初めてで、なんて言うのが正解かわからなかった。
はじめに浮かんだのは謝罪の言葉だったけれど、違う気がして。
私はすべての誰かに役に立ちたい、そして幸せになってもらいたい。それは彼も、同様に。
だから、彼を幸せにしてくれた彼女の存在に、私は心から
「ありがとう」と感謝の言葉を送った。
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