親の愛か空腹知らずか

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 親友のサブの顔が浮かんだ。今日、彼は、食べ物を入手するため、郊外の農家の手伝いに行くと言っていた。労働の対価として、規格外の野菜などをもらうのだという。そうやってよく、糊口をしのいでいる。  仕事の続かない父親との二人暮らしは、かなり大変だろうが、彼に悲壮感はまったくない。  お金もない、食べるものも満足にない(時が多い)、家はボロ屋。貧民エリアと揶揄される地区で暮らす。  だがサブは、皆から好かれ、愛されている。問題の多い父親ですら、不器用ながらも彼をきちんと愛しているのがわかる。  キッチンからリビングを眺めた。  誰もいない。  誰も使わない家具が並ぶだけの広い家。  バターロールを持つ手が下がる。 「親の愛はなくても、飢えも寒さに震えることもない。幸せなことだ」  暗示をかけるように声に出したら、数年前に亡くなった友人の、少し寂し気な笑い顔を思い出した。アイツの家もちょっと複雑そうだった。 「アイツに聞かれたら、怒られるな」  ひとり苦笑する。
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