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幸守は険しい顔をして電話している左門寺を見ていて、波戸は片付けられる食器などを下げるためにお盆に乗せていた。
左門寺は少し話してから電話を切り、幸守の方を向く。その時、彼と幸守は以心伝心したようで、すぐに出掛ける準備を始める。
「こんな時にまた事件ですか?」
波戸は少し呆れながら二人に聞いた。
「波戸さん、すぐ帰ってきますよ」
左門寺はそう言った。「厄介な事件じゃないといいけどな」と、幸守がその後に言うと、「厄介じゃなかったら僕は呼ばれないよ」と左門寺は返した。
「たしかにそうだな」
幸守はふふふと笑って言った。
春になったが、夜になるとまだ寒いこの時期に適した上着をそれぞれ羽織って、玄関に向かう二人。そんな彼らの背中に、波戸は「先生方!」と声をかける。振り向く左門寺と幸守に、彼女は言った。
「今日はそれぞれめでたい日なんですから、くれぐれも気をつけてくださいね」
言われた二人は互いに顔を見合わせてから、幸守がそれに返す。
「いつもそうしてますよ」
そう返して、二人はハイツベイカーを後にした。
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