13の刺し傷

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「なるほど。肝試しねぇ……」菊村も薫と同じことを思っていたようで、その第一発見者のカップルのその証言を信じていなかった。 「まぁいい。死亡推定時刻は?」 菊村は切り替えて事件の話をする。それに反応し、薫が答えた。 「被害者の名前は、“山上賢介”さん。38歳。死因は……まぁそこはいいですね。死亡推定時刻は、久米さんの話だと今から約3時間前。夜の8時頃だそうです」 夜8時か______。菊村は呟いた。そんな彼に久米が説明を付け加える。 「被害者の首にはスタンガンを押し付けられたような火傷があったから、それで気絶させられてここまで運ばれ、イスに縛りつけられた上に刃物で滅多刺しにされた______ってことになるね」 「犯人は、相当恨みを持っている奴ってことだな」 「えぇ。そのようですね」 薫は絶命している男性の亡骸に目をやりながら、そう呟くように言った。 続けて久米が二人に「ま、詳しいことは検死してみないとわからん」と話した。 すぐに遺体は縛りつけられたそのイスから解放され、担架に乗せられて運ばれていった。この近くに法医学教室がある病院がある。遺体は恐らくそこへ運ばれて、すぐに検死されることだろう。それまでに、菊村と薫は現場での捜査を続けた。 凶器は被害者が絶命していた場所のすぐ近くに落ちていた。もちろん、指紋はない。血液で汚れた刃の部分とは違い、持ち手のところはまったく汚れていなかった。遺体が発見されたのが森林の中とあって、周りは人気(ヒトケ)がまったくない。あのカップルが発見しなければ、もしかしたら誰にも見つけられずに放置されていたことだろう。被害者が絶命していたその場所の周りには、先日降った雨のせいでぬかるんでいたせいもあって足跡が幾つもあったが、それは人間のものだけではなく、動物のものも多くあったため、恐らく足の型を取ることも不可能だろう。
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