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捜査の諸々が終わった頃、法医学教室から菊村へ連絡が入り、彼は薫と共にそこへ向かった。
札舞市唯一の方医学教室を有するこの大学病院は、これまで幾つもの事件解決に協力してきてくれた。そのため、菊村も薫も頭が上がらないほどである。そこの法医学教室の飛鳥井梓先生は、元々この大学の内科に所属していたのだけれど、“ある一件”があってから生きている人に恐怖を感じるようになり、それ以来、法医学を志すようになった。彼女曰く、「死んだ人間は何も喋らないからいい」のだという。
その見た目は、綺麗で長い黒髪が特徴的で、顔も美人であった。しかし、検死、解剖の際は躊躇なく遺体を切り刻むことから、『死神』と呼ばれている。しかし、その検死にほとんど間違いはなく、高い能力を有しているため、警察からの信頼も厚かった。
菊村と薫は、その法医学教室に着くと、中には白衣を着たその美人女性が待っていた。メイクをしていなくても美人だとわかるほどの美貌を持つその彼女、飛鳥井梓は「お待ちしていました、警部さん」と言って、二人を迎えた。
「相変わらず美人だね、飛鳥井先生」
そう話しかける菊村。今の時代では、それもあからさまなセクハラになる。だが、梓は別に嫌悪の表情をすることもなく、「私にはいいですけど、そっちの若い刑事さんにそういうこと言っちゃダメですよ?セクハラになりますから」と冷静に忠告した。
「まったく、今の世の中は“ハラスメント”にうるさいよな。ちょっとしたコミュニケーションのつもりで言ったことも“ハラスメント”になっちまうんだから」
「世の中がそう変わっていったんです。私たちはそれに順応していかないと」
梓がそう言うと、うんうん。とあからさまに薫が頷いていた。
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