13の刺し傷

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「それで、左門寺先生、恐らく彼女が犯人という線はないかと思いますよ。彼女は左門寺と同じくらいの“名探偵”ですから」 菊村は彼女が“名探偵”であることを話した。前述した通り、梓もこれまで事件解決に貢献してきた功労者なのである。そのため、警察からの信頼も厚かったのだ。菊村も何度か助けられていて、彼女の人柄も知っているから、殺人を犯すわけがないと確信していたのである。 「ここは二人とも手を取り合って、事件解決のために協力してほしい」 左門寺と梓は互いに顔を見合わせた。梓は友好的であったが、左門寺はやはり彼女を疑っている様子であった。それを感じ取った梓はふぅと息を吐き、「私のこと疑うのは勝手ですけど、そんなに盲目になってたら見えるものも見えなくなりますよ」と言って、ひとつあくびをかいた。 「たしかに、その通りですね。今はとりあえず、複数犯という線で捜査していきましょう」 左門寺は気を取り直して、「被害者はどんな仕事をしていたのかわかってるんですか?」と菊村に聞いた。 「いや、まだです。何せこの時間ですし、殺害されていた被害者の周りには、被害者の財布くらいしか落ちてませんでしたし」 「その財布の中身は?」 続けて聞いたのは幸守であった。菊村は彼の方を向いて、「残ってたよ。だから物取りではない」と答えた。 「まぁ、物取りならわざわざイスに縛り付ける必要もないし、スタンガンで気絶させる必要もない。ましてや、13ヶ所も刺す必要もない。これらの情報から考えて、物取りの可能性は低いでしょうね」 左門寺は顎に手をやり言った。すると、それまで黙っていた薫が「警部、そろそろ捜査会議が始まりますよ」と言った。この真夜中だというのに、捜査会議は開かれるのだ。
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