13の刺し傷

18/28
前へ
/209ページ
次へ
その中には、彼の経験から来る“勘”があって、今回もそうであった。幸守の問いかけに、左門寺は少し虚な目をして、何もないところを見つめながら、「彼女には、“死臭”を感じた______」と答えたのである。 「それがいつ経験したものなのか、彼女が殺したからついたものなのかはわからないけど、彼女は絶対に死を身近に感じたことがある人だ。それも、強制的に選ばされた死を______」 「じゃあ、あの人は何かしらの事件の被害者遺族の可能性があるってことか?」 「もしくは犯罪者側の人間か______」 左門寺はそう呟くように、低い調子の声で落とすように言った。 そんな中、捜査会議は始まった。 被害者の山上賢介は、市内にある高校の数学教師であることがわかった。 その高校は、阿笠学園高等部______。そこの高校については、左門寺がよく知っていた。過去に一度、犯罪防止の特別講義を生徒たちにしたことがあるらしい。捜査は翌る日にその学校に行ってから始まるらしい。 その捜査会議が終わったのは、すでに夜中の3時を過ぎていた。さすがに左門寺や幸守も眠気を感じていた。 「さすがに眠いな」 「あぁ。こんなに苦痛を感じる捜査会議は初めてだ」 この事件の報せをもらったことで、酒の酔いは吹っ飛んでいた。だが、明け方までに起きているのは少し疲れる。徹夜して小説を書いていることもある幸守も、あくびをかいてしまっている。捜査会議が終わって、周りに座っていた刑事たちはすぐに会議室から出ていく。そのドタドタという騒がしい足音で、一瞬だけ眠気が醒める。その時、「お二人さん」と菊村が話しかけた。まだ座ったまま、あくびをかいている二人に菊村と薫は歩み寄り、「明日、我々も学校に行こうと思っているんですが、どうしますか?お二方も行きますか?」と菊村は聞いた。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加